映画『インランド・エンパイア』

2006年製作

アメリカ、ポーランド合作の

『インランド・エンパイア』

↓↓↓

IMG_2454.jpeg

監督・脚本・製作は

奇才デヴィッド・リンチ(1946-2025)

↓↓↓

IMG_2237.jpeg

彼が『マルホランド・ドライブ』以来

5年ぶりに手がけた作品ですが

以降、一本も映画を撮っていないので

これが彼の遺作となりました

Wikipediaによりますと

本作は

リンチが好きな時に俳優を呼んで

自分でカメラをまわし

その断片を繋げていくという

なんともクリエイター冥利に尽きる

製作スタイルでして

おかげで

製作期間は2年半にも及んだそうです

また長引いたことで

製作会社が資金提供を渋り

結果的にほぼ自主製作のような形になってしまった、と

製作費は監督本人と

本作のプロデューサーでもある

前妻のメアリー・スウィーニーが捻出し

完成にこぎつけることができたとのことです

とまあ

そのような経緯の中で出来上がった本作は

ひとりのハリウッド女優が

いわくつきの映画の撮影を通して

やがて混乱に陥る様を

シュールな映像で描いた

180分に及ぶ不条理ミステリーです

↓↓↓

IMG_2236.jpeg

ハリウッドに住む女優ニッキー・グレイスは

ある新作の主役に抜擢される

しかしこの映画は

かつて主役2人が謎の死を遂げ

製作が中止に追い込まれた

いわくつきの映画のリメイクだった

陰で呪われた映画と囁かれる中で

映画の撮影は進行するが

演技の読み合わせの途中

↓↓↓

IMG_2242.jpeg

ある不可解な出来事が生じ

現実と映画の世界が交錯しはじめ

やがてグレイスは

夢とも現実ともつかぬ

混沌の世界へと埋没していく…

↓↓↓

IMG_2241.jpeg

って

カメラが

ズンズンと

中へ

いわば

グレイスの内面へと

容赦なく押し入っていく感覚

そうして

深層心理の淵を覗き込んだ先に

見えたものは

一体…

↓↓↓

IMG_2240.jpeg

グレイスが辿る悪夢の道程

インランド・エンパイア(=内なる帝国)の

不穏で妖しい世界

ふぅ

それにしても長い…

ちょっと冗長感は否めませんね

まあリンチが

晴耕雨読のごとく

勝手気ままに撮ったわけですから

それはそれで

よしとしたいのですが

↓↓↓

IMG_2235.jpeg

たぶんに

ショッキングだったりする展開や

(リンチお気に入りの)

ローラ・ダーンのドアップの多用

↓↓↓

IMG_2243.jpeg

って

それが夢の中で

唐突にこんな感じになったりしますが…

↓↓↓

IMG_2455.jpeg

(おいおい…)

なんといいますか

作品としての

ある種の一貫性

といいますか

一本通った筋

のようなものは

本作には

ないかな…

脈絡のない展開や

論理的な解釈ができないといったことは

深層心理における世界においては

至極当然で

シュルレアリスム的な世界観といえば

たとえば

『ロスト・ハイウェイ』(1997)

『マルホランド・ドライブ』(2001)

など過去の系譜を容易に連想させ

そうした流れに沿った形で

本作は

新境地を開拓した野心作

と言えるのでしょうが

う〜ん

観ていて

ちょっと行き過ぎのような気がしますね

これはひとえに

制約のゆるい環境下で撮られたゆえの

締まりのなさが

画面に出ちゃっているかな…

本作は

全編デジタルビデオで撮影され

フィルムは一切使っていないのですが

なんとなく

薄っぺらい感じがして

デジタルは必ずしも否定しませんが

本作において

僕はちょっとどうかなと思いましたね

よくよく

リンチが

ひとり密かに

長い年月を重ねて

思うままに撮った

『イレイザーヘッド』(1977)とは

ちょっと似ても似つかないかな…

環境的には同じようでも

金銭的な制約が絶えず課された中で

創作欲を発揮して完成させた

この処女作の

圧倒的な純度、強度と

本作とでは

正直、比べものにならないかな…

おっと

つい厳しい意見が先行しちゃいましたが

リンチに対する

これ思いの強さ、期待値の高さの

表れとしての意見です、ハイ

とまあ

本作についても

マニアックな解説や

詳細な解釈が書かれた論が

ネット上にあまたあるので

ここではくどくどと触れないようにします

あくまで

本作で描かれるのは

内奥の世界で

論理的一貫性などフル無視でしょうから

あまり深読みせず

流れる映像に身を委ねて

感性の赴くままに

観るべきですね

↓↓↓

IMG_2246.jpeg

って

度々出てくる

ロスト・ガールが

ウサギ人間が映るテレビモニターを見て

涙を流す場面

↓↓↓

IMG_2457.jpeg

それはそうと

ウサギの面を被った人たちのこれ

一体何?

↓↓↓

IMG_2239.jpeg

ハハハ

考えない考えない…

それにしても

主演のローラ・ダーンは

なんといいますか

リンチ好みなんでしょうね

戦慄する顔や

狂気に囚われた時の表情など

話の脈絡と関係なしに

それ自体で

ピタッと絵画的な

有無を言わさぬ説得力がありますね

↓↓↓

IMG_2456.jpeg

とまあ

そんなわけで

鬼才リンチの遺作

『インランド・エンパイア』

傑作とは言えないまでも

まぎれもないリンチ・ワールド全開の一作

いやあ

好き嫌いが分かれる映画ですが

それでもやはり

僕はオススメします

↓↓↓

IMG_2244.jpeg

おまけ

リンチの作品について

以前僕が書いた記事を転載

◎『エレファント・マン』→こちら

◎『ブルーベルベット』→こちら

◎『ワイルド・アット・ハート』→こちら

◎『ロスト・ハイウェイ』→こちら

◎『マルホランド・ドライブ』→こちら

◎『ツインピークス』新シーズン→こちら

◎デヴィッド・リンチ追悼→こちら

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。