ジャリ『ユビュ王』
ふと想起
シュルレアリスムの画家
マックス・エルンスト(1891-1976)による
『ユビュ皇帝』(1923)
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寸胴の赤い体躯に
足元は駒という出で立ち
その奇妙でユーモラスな風貌が
どこかトトロを連想させつつ
しかし
この絵には元ネタがあります
19世紀末から20世紀初頭
“ベルエポック”と呼ばれた
狂乱のパリの時代に
大量のアルコール漬けによる
放蕩三昧の挙句
結核によって
わずか34歳でこの世を去った
異端の小説家であり劇作家の
アルフレッド・ジャリ(1873-1907)
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…による
戯曲『ユビュ王』(1898)です
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なるほど
雰囲気は似ていますね
『ユビュ王』は
悪意に満ちた卑劣なユビュ親父が
力づくで王位を奪い
やりたい放題の限りを尽くすが
やがて追放されて
諸国を放浪するという物語です
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と
これが後々
1920年代に勃興した
シュルレアリスム運動における
不条理文学、不条理演劇の
まさに先駆的な作品として
当時、運動を先導した
詩人アンドレ・ブルトンら
多くのシュルレアリストたちに
熱狂的に受け入れられ
また
このユビュ王をモチーフに
幾人かの画家たちが
想像力を駆使して描いた
肖像画のうちの一枚が
上記のそれというわけです
と
しっかし
この生みの親のジャリは
アブサンを初めとするアルコールを
毎日浴びるほど飲み
また自転車とピストルを偏愛
多くの悪趣味で知られる奇人ながら
つくづく知る人ぞ知る才人ですね
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彼は
パロディとナンセンスを地で行く
《パタフィジック》(=形而超学)
なる造語を生み出し
それが後に
その哲学(⁈)を信奉する
“パタフィジシャン”
“パタフィジスト”
たちを多く生み
なんとやがて
「パタフィジカル研究所」
なるものが創設されるなどして
その潮流が
世界的に拡散していったりします
つくづく
ダダイズムやシュルレアリスムなどに呼応する
時代の空気やニーズを
いち早く察知する感性と
それを表現する術を持っていたという点で
いやあ
あらためて
アルフレッド・ジャリ
彼は天才に違いありませんね
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