映画『バルタザールどこへ行く』
1964年製作のフランス映画
『バルタザールどこへ行く』
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監督・脚本は
孤高の映画作家
ロベール・ブレッソン(1901-1999)
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その厳格な思想
ストイックな作風によって
映画史に屹立する無二の存在です
う〜ん
しっかし容赦ない…
あまりに絶望的な映画です
人間から厳しい仕打ちを受けながら
家畜として使役させられる
バルタザールという一頭の黒いロバ
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蹄鉄を打ち込まれ
激しく鞭打たれ
悪戯で尻尾に火をつけられ
八つ当たりから数々の暴行を受け
やがて致命的な傷を負い…
そうして最後には
無惨にも死んでしまいます
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人間の強欲、嫉妬、その悪業を
ただじっと見つめ続け
人間たちから受ける虐待のかぎりを
自らの運命であるかのように
黙って受け入れる
従順なロバ
まるで人間が犯した罪を
一身に背負うかのごとき
贖罪的な役割を担うロバ
その
哀しい目をした
慎ましやかな佇まいに
…神を見ます
本作には
ブレッソンの宗教観が如実に反映されています
冷静に見ると
日常における
ただの一頭のロバかもしれません
しかしブレッソンは
この穏やかで寡黙なロバを
あたかも神の化身のごとく
象徴的に捉えているのです
と
ブレッソンの特異な宗教観
それは17世紀のオランダで生まれたとされるカトリックの一宗派
「ジャンセニスム」に基づいていると言われています
詳述は避けますが
人間の運命は神によってあらかじめ予定されていて
それを覆すことはできない
しかしだからといって
受動的な生き方を余儀なくされるわけでなく
神によって定められてはいるものの
人間は知るよしもない
いわば“偶然”を積み重ねることによって
自らの人生を生きることに至るのだ
…と
ブレッソンは
この
カトリックの中で
とりわけ異端とされる信仰を
受容する立場をとっていて
それを自作で繰り返し表現しているのです
こうした宗教観に根ざしたブレッソンの映画は
ドラマ的な高揚
…余計なセリフや説明描写、音楽などを一切排した
禁欲的なスタイルで貫かれ
どこまでも淡々と冷徹な視点で描かれます
しかし
それによって映画は
一種異様な静けさ、穏やかさを孕んだ
独特の空気感を宿し
いやあ
観る者の心を揺さぶらずにはいられないのです
ロバと心を通わせるひとりのあどけない少女
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(本作でデビューを飾った
アンヌ・ヴィアゼムスキーが印象的です)
思春期を経て大人へと至る過程で
辿る堕落…
そして残酷な結末
ロバの眼を通して見た
人間の愚かさ、醜さ、罪悪…
う〜ん
つくづく
なんとまあ哀しくも
しかし美しい映画でしょうか
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というわけで
孤高の作家
ロベール・ブレッソンによる
至高の映画
あらためて傑作です
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