映画『アディクション』
1995年製作のアメリカ映画
『アディクション』
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監督はニューヨークを拠点に
数々の問題作を発表し続けるインディーズの鬼才
アベル・フェラーラ(1951–)
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主演は前回ご紹介の女優、リリ・テイラー
彼女がキャリア最高の演技を披露してくれます
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ニューヨークの大学で哲学を専攻する学生キャサリンは
夜、街でロングドレスに身をまとった女に声をかけられ
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おもむろに建物の地下へと連れて行かれ
首筋を噛まれてしまう
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夥しい血が流れ
動揺するキャサリンだが
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貧血で苦しみ悶えるうちに
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ふと次第に自分の中に
ある変化が生じ始めていることに気づきます
人間の生き血への渇望です
と
それはつまり
己の中に眠っていた
邪心への目覚めをも意味しました
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しかし同時に
罪悪感が彼女を襲います
まさに理性と欲望のせめぎ合い
人間(=善)と吸血鬼(=悪)との狭間に揺れ
激しく苛まれるキャサリン
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しかし吸血鬼としての性分が顕在化するにつれ
やがて悪への欲求が良心を凌駕し
彼女の中枢を占めていきます
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と本作は
善悪二元論の様相を呈しながらも
そう単純な構図には容易に収めません
人間の弱さを軽蔑し
むしろ弱さこそが悪であるとするヴァンパイアですが
しかしそもそもヴァンパイアは弱いからこそ
吸血鬼になってしまったわけで
また同時に
自ら生き血に依存している弱さをも露呈しているわけで
そう考えますと
単純に善悪で分けられる話でもなく…
う〜ん
哲学的な問答は尽きませんね
まあ吸血鬼は
多分に麻薬中毒者などのメタファー
とも捉えることができますね
また本作の中で
ひときわ異彩を放つのが
クリストファー・ウォーケン演じる吸血鬼の男で
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人間の生き血を求める己を克服し
同じ吸血鬼の血で生きることができる
いわば高次のヴァンパイアを体現しています
短い出演シーンながら
ウォーケンが圧倒的な存在感を放っています
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そしてクライマックス
論文が完成し博士号を取得したキャサリンは
祝賀パーティの席で己の素性をぶちまけ
集まった吸血鬼の仲間たちで
大学教授ら出席者に一斉に襲いかかります
まさに盛大なる血の饗宴です
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いやはや
なんとまあアナーキーでパワフルな表現でしょうか
と
欲望の赴くままに血を求めるキャサリンですが
理性を失ったわけではありません
そうした己の存在理由を巡る内的葛藤を通して
果たして彼女は魂の救済を得ることができるのか
映画は実存的なテーマを内包しつつも
黒い血で彩られたダークな世界を
全編モノクロ映像でスタイリッシュに創造します
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終始抑制されたトーンの中から
時折垣間見えるバイオレンスの衝動
フェラーラ監督の緩急織り交ぜた
卓越した演出が光ります
そしてなんといっても
リリ・テイラーの怪演ぶり
小柄ながら
ただならぬ凄みをたたえた圧巻の演技です
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またウォーケンに負けず劣らず
キラリと光る脇役のアナベラ・シオラが
不穏なムードを発散し続けていて
とにかくいい
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というわけで
アベル・フェラーラ監督による異色の吸血鬼映画
是非とも必見です
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