映画『紅いコーリャン』

1987年中国映画

『紅いコーリャン』

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監督は

チャン・イーモウ(=張藝謀、1950-)

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言わずと知れた

中国を代表する巨匠の

本作が記念すべき初監督作となります

1920年代末の中国山東省

貧しい農家の娘である九児(コン・リー)は

家の経済的困難から

ハンセン病を患う酒屋の李のもとに

18歳で嫁ぐことになる

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その嫁入りの際に

輿を担いだ青年のひとり、余(チアン・ウェン)と

運命的な恋に落ち

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あるじが行方不明になったのを契機に

二人は晴れて結婚

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様々なトラブルを乗り越えながら

酒屋を切り盛りしていく

コーリャン酒をメインに商売も順調にすすみ

8年もの月日を数えながら

その間、子どもも生まれ

一家は幸せな日々を過ごしていたのだが

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やがてこの地に日本軍が侵攻してくる

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冒頭の

嫁入りの輿を担いで

歌いながら闊歩していく男たちから始まり

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本作は

全編を通して

熱量の高い

ダイナミックなシーン満載で

力強いショットがみなぎっています

何より

紅色を基調とした鮮烈な映像美

鬱蒼と生い茂るコーリャン畑の緑色の中で

赤がいっそう際立つ色彩設計を構築

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本作は

九児と余の孫にあたる

“私”の語りで進行するスタイルで

語り手である”私”が

親から聞かされ伝承した話ゆえ

映し出された映像は

たぶんに神話的なムードをたたえ

実際よりも幾分、誇張されたような

ある種の表現主義的なニュアンスが

リアルな映像の端々に垣間見え

まこと象徴的なエピソードを交えて

物語が紡がれていきます

コーリャン畑の真ん中で結ばれる

九児と余の二人

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余がコーリャン酒の甕の中に放尿したところ

その甕の酒が美酒に変化する

などなど

さらに映画は

マジック・リアリズムのような

赤みがかった

シュールでリアルな映像が創出され

観る者に強烈なインパクトをもたらします

紅く染まったコーリャン畑

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って

物語の終盤

象徴的な出来事として

日本軍の残虐性がクローズアップされますが

このくだりは

中国政府に容認されうる脚本作りの一環かなと

推察するかぎりで

ここはむしろ政治的な見方はせずに

劇中のエピソードのひとつとして

捉えるのが妥当かなと思うところです

映画のラスト

日本軍によって九児は撃ち殺され

余と男たちは

怒りの声をあげながら

日本軍に襲いかかり爆薬を投じ

あたり一帯は血の海と化す

生き残った余と息子は

灼熱の太陽に照らされながら

血に染まったコーリャン畑に立ち尽くす…

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哀しみをたたえつつ

揺るぎない男の顔を捉えて

映画は終わりを告げます

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あまりに鮮烈な映像表現

ほのかに立ち上がってくる物語の神話性

しばしの余韻

ふぅ

いつまでも脳裏に焼き付いて離れません

本作が映画デビューとなるコン・リーが

初々しくも気丈な

酒屋の女主人を好演

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とまあ

赤は

照りつける太陽の色であり

流れる血の色であり

コーリャン酒の色であり

九児が着る服の色であり

おまけで

中国共産党の色でもあります…

つくづく

本作は

チャン・イーモウによる

こだわり抜いたであろう

赤を軸にした類稀な映像感覚に酔いしれ

物語の持つ強度

全編に充満する生命力に

感嘆する他ありません

というわけで

『紅いコーリャン』

いやあ

これは紛れもない傑作

今更ながら

必見です

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