映画『幸福』
先日の夜
子供たちが早く寝て
少し時間ができたので
たまには映画でも観ようかということになり
おもむろにこれを選んで
かみさんと二人で観ました
1965年製作のフランス映画
アニエス・ヴァルダ監督の
『幸福』
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冒頭
風に揺らぐひまわりと
肩越しにぼんやりと映る家族4人の姿
自然光によるセピア調の美しい映像に
モーツァルトの優雅な調べ(=クラリネット五重奏)が重なり…
シンプルなタイトルの通り
まさに絵に描いたような幸せな光景
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…だが
ひまわりの大写しと
手をつないで歩いてくる4人の姿の
二つのショットが交互に切り替わり
次第にカットが早くなる
…につれて
この穏やかな日常の光景が
かすかに不安の色を帯び始めます…
自然光による色鮮やかな映像は
まるで印象派の絵画のように美しく…
しかし
このひまわり
ゴッホの絵を想起させるまでもなく
女性監督ヴァルダの繊細かつ衝動的な心理
研ぎ澄まされた感性を
無言のうちに代弁します
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う~ん
あまりに美しく幸せな映像が続くと
むしろ逆に嫌な予感を覚えるもの
観ている側は
『幸福』
と題された
この映画の不穏な行方を
おのずと予見します
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夫フランソワは
妻テレーズと二人の子供と幸せに暮らしていたが
出張先で郵便局員エミリーと知り合い
度々会ううちに深い関係となってしまう
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と
フランソワに罪悪感はまったくなく
妻と家族も愛するが
愛人も同時に愛するという
まあ、ある意味
とても現代的な感覚といいますか
本作が1965年に作られたことを考えると
さすがは
おフランス~
なんて妙に感心させられることしきりですが
それはそうと
ここからが見どころ
(以下、ネタバレ注意)
ある休日
いつものように家族でピクニックに出かけ
妻とくつろいでる最中
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フランソワは
つい話の流れからテレーズに
別の女性も愛していることを
正直に告げてしまう
フランソワにてらいはなく
むしろ妻は
今の幸せな自分を
きっと理解してくれるだろうという
妙な確信にとらわれている
そしてそんな夫を見て実際に理解を示す妻テレーズ
テレーズの反応を喜びその場で愛し合う二人
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しかし
うたた寝から目覚めたフランソワの前に妻の姿はなく
子供たちと一緒に捜すうちに
ほどなくして
河に身を投げたテレーズの死体に遭遇する…
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フランソワは失意に暮れるも
やがて時が経ち
郵便局員のエミリーと再会し
のちに再婚
ラスト
落ち葉の季節
子供たちの手をとって
幸せに4人で歩くハッピーエンド
冒頭と同じ光景
だが
妻が入れ替わっている皮肉…
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監督ヴァルダは
過度な思い入れなく
あたかもドキュメンタリーのように
登場人物たちをどこまでも淡々と描いています
それでいてリアリティの欠如した
前衛的なカットも所々挿入され
映画はフワフワと宙に浮いたような
不思議な世界観を醸します
それゆえに観ている方は
人物たちに容易に感情移入できません
…が
それでも
夫の自己中な勘違いぶりが招いた悲劇と
この皮肉な結末には
なんとも身につまされるような後味の悪さが
じわり残ります…
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まさに本作はヴァルダによる
男性社会に対する静かな警鐘ともいえましょうか
いやあ
アニエス・ヴァルダは
ヌーヴェルヴァーグ時代から一貫して
独自のフェミニズムを表現すべく
異彩を放っていた存在で
代表作は
『5時から7時までのクレオ』(1961年)でしょうかね
また夫は『シェルブールの雨傘』(1964年)の監督で有名な
あのジャック・ドゥミ
というわけで
本作は
ヴァルダのほとばしる才気と
豊かな感受性に溢れた佳作
まあ本質的には
とても怖い映画ですね
ふと
一緒に観ていたかみさんの反応やいかに
おそるおそる横を見やると…
う~ん
よりによって
えらい映画をチョイスしちゃったなぁ…
これは夫婦で観ない方が良さそうです(笑)。
人は幸せの先に不安を見るものですが、それを上手く活用しているのでしょうか。
そして男と女の違いを現す究極の表現。
やはり映画の文章は楽しみです。
本当に引き込まれます。(*^^*)
>(株)第二営業部 教授さん
いつもありがとうございます^ ^❗️