映画『詩人の血』
ブニュエルとダリ共作の
『アンダルシアの犬』(1929)と並ぶ
アヴァンギャルド映画の古典です
1930年製作
フランスの詩人
ジャン・コクトーによる
上映時間51分の映像詩
『詩人の血』
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詩、小説、演劇、バレエ、映画、絵画、評論など
様々なジャンルを軽やかに横断し
先鋭的な活動を展開した
元祖マルチアーティスト
ジャン・コクトー (1889-1963)
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本作は貴族であるド・ノアイユ伯爵の
全面的な資金提供を得て
自由な撮影環境のもとで製作された
コクトー初めての映画作品で
処女作にしてすでに
この稀代の芸術家の特異で独創的な世界観が
余すことなく視覚化された野心作です
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何しろ作られたのが
今から80年以上も前ですからね…
その事実にまずもって驚かされます
冒頭、絵画を制作する詩人
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自身の描いた絵の女性の口が
突然、掌に移ってしまい
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おもむろに口のついた手を体中に当てて
恍惚に耽る…
エロいですね…
と
コクトーの芸術の重要な核をなす
モチーフのひとつが
鏡です
コクトーは鏡を
こちら側と向こう側
つまり“現実と夢”
さらには“生と死”
…の境界と見立て
鏡の向こう側=夢と死の世界への
その抗いがたい磁力に引き込まれるイメージを
自作で繰り返し表現し続けました
本作でも主人公の詩人が
鏡の中へ
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飛び込み(…実際は水面ですね)
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魅惑と幻想に満ちた
夢の世界へと入っていきます
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このたぶんに刹那的で
ナルシシズムに裏打ちされた
比類なき美意識は
自身が公言してはばからなかった
同性愛者としての性的指向に依るところが大きく
特筆すべきは
それをむしろ芸術家の勲章
ある種の矜持と捉え
あくまで創作の糧にしようとした
その強靭なまでのスタンスにありましょうか
『肉体の悪魔』で知られる
少年詩人であり小説家のラディゲ(1903-1923)と
恋愛関係にあったコクトーは
しかしラディゲの夭折に深く絶望し
それから10年にわたって
阿片に溺れ続けます
そうした現実逃避の果てに
生み出された作品が
傑作小説『恐るべき子供たち』であり
『阿片ー或る解毒治療の日記』です
すごい話ですね…
とまあ
そんなわけでして
本作『詩人の血』は
エロスと
タナトス(=死への誘惑ですね)
…の世界を縦横無尽に旅する詩人の話で
コクトーの夢と死のイメージが
全編にわたり
シンボリックに散りばめられた映像詩です
でもコクトーの描く死の世界は
地獄というより
むしろ天国のような柔和な印象を抱きますね
これは彼お気に入りの
ギリシャ神話のイメージに負うところ大でしょうか
美しく優雅ですらある頭を撃ち抜く詩人
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漆黒の肌の守護天使
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ゲームに敗れ再び…
そして滴り落ちる鮮血
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ハーブ、地球儀と共に眠る彫像
いわばミューズ
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トリック撮影などの特殊効果もふんだんに取り入れ
ユニークな視覚表現を駆使しながら
全編
瑞々しいまでの感性に満ち溢れています
というわけで
あらためて“芸術の魔術師”
ジャン・コクトー最高です
もちろん
他の作品も素晴らしい
あまりにも有名な『美女と野獣』(1946)
そしてジャン・マレー主演
コクトーの最高傑作として名高い
『オルフェ』(1950)
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またこちらは
コクトーのよく知られたデッサン
どれも単純な線のみで
無造作に描かれたものながら
ひと目でコクトーとわかる独創性
誰でも描けるのですが
やっぱりコクトーに違わないんですよね
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横顔が定番の
優雅で柔らかい天使のイメージ
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