『ジャコメッティ展』
もう終わってしまいましたが
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六本木の国立新美術館にて
今月4日まで開催されていました
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『ジャコメッティ展』です
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ふぅ
待望の開催でした
ジャコメッティは何を隠そう
僕の一番好きな芸術家でして
今回、初期から晩年にいたる
彫刻、油彩、素描、版画など
合計132点が一挙集結するという
いやあ
まさに夢のような本展でしたね
今から10年以上前に
神奈川県立近代美術館で
ジャコメッティ展が開催された時も
喜び勇んで遠く葉山まで足を運び
長時間にわたり
彼の彫刻や絵画を凝視し過ぎて
フラフラな状態で車で帰った記憶がありますが
今回は内容的に更に充実していましたね
と
僕がジャコメッティに対する
尽きせぬ想いを綴った
過去のブログ記事は→こちら
ということで
あらためて
アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)です
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スイスに生まれ
1922年以降は
生涯を通して
パリを主な活動拠点としたジャコメッティは
20世紀のヨーロッパにおける
最も重要な彫刻家のひとりと称されています
最近
彼のターニングポイント的な位置づけの作品
《指差す人》が
なんと約170億円で落札されるなど
没後50年を経た現在
世界各地でジャコメッティ・ブームが
再燃しつつあるようです
《指差す人》(1947)
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「破壊することによってしか制作しない」
「試みること、それが一切だ!」
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人間存在の本質を見つめ続け
破壊と創造の絶え間ないせめぎ合いの末に
生み出されたその特異な造形が
観る者の心を鷲掴みにすること必至
そんなわけで以下
つらつらと本展をご紹介
何よりジャコメッティといえば
このように
細長く引き伸ばされた人物の彫像で
知られていますが
パリにやってきた20年代当初は
キュビスムに傾倒したり
その後に起きた
シュルレアリスムの運動に参加したりして
時代の先鋭的な空気に
敏感に呼応していました
またアフリカやオセアニアの古代美術の造形に
影響を受けていて
隠喩に基づく
プリミティブな表現を試みていました
《女=スプーン》(1926/27)
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西アフリカのダン族が使用していた
穀物用スプーンに
女性を重ね合わせ
豊饒さを象徴とする
丸みを帯びたユニークな女性立像を創造
他にも古代彫刻を想起させる
抽象的でシンプルな造形と
キュビズムが相まった
《コンポジション》(1927)
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そうした様々な表現の模索を経た後
1935年頃からモデルに向き合い
独自のスタイルの創出に取り組み始めます
テーマはズバリ
「見えるままに描く」
それは
“自らの知覚に忠実に描くということ”
であり
“ある距離を置いて認識した対象の正確なヴィジョンを表現するということ”
でありました
って
ちょっと難しいですね
ジャコメッティはこうも言っています
「私とモデルの間にある距離は絶えず増大する傾向を持っている
“もの”に近づけば近づくほど“もの”が遠ざかる」
人間の知覚は見える距離や動きによって
またその時々の
その人の心身の状態によって変わってしまう
ジャコメッティは
距離を含んだ全体として
対象を捉えるという
終わりなき探求に足を踏み入れるのです
しかし彼は
1938〜40年代半ばにかけて
創作過程において
ある問題に直面します
「見えるまま」に描こうとしたら
対象が決まって実物大よりも
小さくなってしまうという現象です
自身が納得できる出来栄えの作品は
どれもみな小さなサイズで
第二次大戦が終わった1945年当時に
ジャコメッティが
実際パリに持ち帰ることができた作品は
マッチ箱に入るほどの
小さな6体の彫像のみだったそうです
《小像》(1946/80)
ブロンズ 23.5 × 7 × 10 cm
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さらにもっと小さいサイズ…
《小像(男)》:左、《小像(女)》:右(1946)
ブロンズ 6.6 × 2.2 × 2.6 cm、ブロンズ 3.3 × 1 × 1.1 cm
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とにかく小さい
でも確かに精緻でリアルで
それはそれですごい存在感です
そうした創作上の悩みに直面していた
ジャコメッティはある時
“1メートルという高さ”
の制約を自らに課し
再び制作に取り組むのです
すると今度は彫像が
次第に縦に細長く伸びていったのです
かくして
自身の目に映ったままの全体像を捉えようと
葛藤し続けたジャコメッティは
虚飾を剥ぎ取ったかのような
細長いフォルムに
荒々しいタッチの表面を持つ
唯一無二の造形スタイルを
獲得するに至ったのです
《大きな像(女:レオーニ)》(1947)
ブロンズ 167 × 19.5 × 41 cm
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なんとも興味深い創作プロセスですね
ちなみにジャコメッティ作品の
多くを占めるブロンズ像は
骨組みと粘土で制作された
立体を石膏で型をとり
そこに溶かして液体となったブロンズを
流し込む鋳造法でできています
ゆえに立像の生の姿といいますか
人が知覚した一瞬を捉えることに
成功しています
《3人の男のグループ(3人の歩く男たち)》(1948/49)
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あまりにも細長い人物像ながら
動く人間の姿を捉えたその彫像に
どこまでも
リアルで生き生きとした印象を抱く不思議
《林間の空地、広場、9人の人物》(1950)
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つい
いつまでも見入ってしまいましたね
人間の
存在の確かさです
ジャコメッティの言葉を想起
「生者を死者から隔てるまなざしを捉えること」
というわけで
いやはや
長くなりそうなので続きは次回
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