映画『パーマネント・バケーション』
果たして
勤勉はよくて、怠惰はいけないのか
積極的はよくて、消極的はいけないのか
前向きはよくて、後ろ向きはいけないのか
向上心はよくて、自堕落はいけないのか
まあ
どこまでも組織の中の話でいうと
当たり前のように“前者”のベクトルになりますが
しかしねぇ
なかなかどうして
豊かな感性が育まれる土壌が
“後者”には
確かにあるんですよね
1980年製作のアメリカ映画
『パーマネント・バケーション』
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監督は
アメリカ・インディペンデントの雄
ジム・ジャームッシュ(1953-)
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彼が弱冠27歳の時に自主製作で撮り上げた
記念すべき長編デビュー作となります
ニューヨークに住む高校生アリーの
どこまでもとりとめのない日常
ニューヨークの雑踏を
自由気ままに
あてどなくさすらうアリー
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映画は
終始まったりとした独特のテンポを保ちながら
孤独で繊細なアリーの心情を
ニューヨークの路地や廃墟などの
いわば心象風景を通して
象徴的に視覚化していきます
途中出会うアウトローな先達たちにも触発され
自ずと芽生える
抑えがたい自由への渇望
ジャック・ケルアックをはじめとするビートニクへと連なる系譜
その異邦人的な感覚
ボヘミアンな習性
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そんな漂流の果てに
アリーは旅に出る…
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ふと
本作には自主製作ゆえの荒い箇所が
所々散見されるも
それでも
何が撮りたいのか
何を表現したいのか
…が最初からはっきりしている
つまりジャームッシュは
自身のテーマ、スタイル
何より
明確なビジョンを持っているのです
つくづく
こういう人こそ映画を撮るべきですね
と
その後ジャームッシュは
同じテーマによる次作
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)によって
時代の寵児へと躍り出ます
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クールな構図
オフビートなテンポ
何よりカットとカットの間に黒味を入れるという
斬新な手法によって生まれる独特な間
“何も起こらない”
この奇妙な
それでいて美しく詩的な世界観に
いやあ
僕もすっかり酔いしれましたね
というわけで
本作『パーマネント・バケーション』は
あくまで『ストレンジャー…』の習作として
結果的に広く知られるところとなるわけですが
なんのなんの
この確かなセンス
才気ほとばしる瑞々しい感性
あらためて
ジャームッシュの原点
必見の映画です
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