映画『木靴の樹』
映画史に残る珠玉の名作です
1978年製作のイタリア映画
『木靴の樹』
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監督は名匠、エルマンノ・オルミ(1931-2018)
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脚本、撮影、そして製作も兼ねたこの一作で
一躍、その名を世界に知らしめます
う〜ん
しっかし
すごい映画です
19世紀末の北イタリア、ベルガモの農村
地主に搾取されながら小作農を営む人々のつましい生活模様
映画は
小作人として農場に住み込むバティスティー家を軸に
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洗濯を生業とし6人の子供と父親を養うルンク未亡人一家ほか
2家族に焦点を当て
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各々が過ごす毎日における
ささやかなエピソードを
端正な画面構成で丹念に紡いでいきます
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積み重ねられる日常のディテール
慎ましい生活の中に根づく
素朴な信仰心
神の存在に対する
ある種の確信
それらが厳しい生活風土の中で
自ずと育まれていく様子が
まことリアルに描写されています
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本作は
ベルガモ出身のオルミ監督が
幼ない頃に祖母から聞いたという昔話の数々をベースにしていて
出演者は全員、ベルガモに住む実際の農民たちだそうです
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つくづく
映し出された映像の
揺るぎない強度
この圧倒的なまでの
真実味
迫真性
淡々と
しかし確かな説得力を伴って
観る者に迫ってきます
そして
自然の摂理の中で生きる人々の営み
圧巻の豚の屠殺シーン
う〜ん
僕らはその一部始終を
ただ固唾を飲んで見守るほかありません
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と
4家族は土地や住居はおろか
家畜や農具一式に至るまで
すべてを地主から借りて農業を営んでいます
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そんなある日
バティスティー家の息子ミネクの履いていた木靴が
村から遠く離れた学校からの帰り道に
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割れて壊れてしまいます
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足を引きずりながら
ようやく帰宅した息子を見たミネクの父は
河のほとりにあるプラタナスの樹を
夜中にこっそり伐り倒し
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息子のために
新しい木靴を作ってあげるのですが
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そのことが樹の持ち主である地主に知られるところとなり
そして…
…
いやあ
四季折々
オールロケーションでの
自然光による撮影によって
映画は全編
詩情に満ち溢れた
ため息の出るような美しさを宿しています
まるで
ミレーやコローの農民画を彷彿とさせますね
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まさにリアリズムの極致
まるでこの時代にタイムスリップして
ドキュメンタリーを観ているかのような錯覚に
しばしとらわれます
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そこにオルガンの音色による
バッハの荘厳なバロック音楽が時折響き渡り
人々の慎ましい生活態度に
自ずと宗教的な意味合いが付与されます
と
本作では
貧しさのあまり
修道院から養育費が支給される里親制度で
やむなく養子を譲り受ける新婚2人の現実を映したりして
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よくよく
19世紀末の北イタリアの農村という時代背景における
封建的な社会体制
それによる農民たちの生活の困窮ぶりや
義務教育が行き届いていない生活基盤の脆弱さ
カトリック信仰のある種の絶対性など
そうした
いわば前近代的なあり方に対して
いくらでもネガティブに捉えることができましょうが
オルミは安易な社会批判を避け
あくまでドキュメンタリストの眼差しで観察に徹し
良いも悪いもひっくるめたところの
当時を生きた農民たちの
ありのままの姿を
ひたすら
時に容赦のない視点で
フィルムに収めていきます
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(撮影風景)
オルミの、この徹底したスタンスはまさしく
戦後の荒廃した現実をありのままフィルムに焼き付けた
イタリアン・ネオレアリズモの伝統を
明らかに継承していると言えましょう
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いやあ
ミネクを演じた少年の可愛さと相まって
映画は
奇跡の映像のこれオンパレードで
観る者の心をいつまでも捉えて離しません
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というわけで
『木靴の樹』
これぞ本物の映画
まさに世界を驚嘆させた
映画史に燦然と輝く傑作です
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