映画『バートン・フィンク』

1991年製作のアメリカ映画
『バートン・フィンク』
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監督・脚本・製作を分業で担うのは
ご存じ、ジョエル&イーサンの
コーエン兄弟(右がジョエル)
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彼らのキャリア前期を代表する
不条理なブラックコメディの傑作です
主演は曲者俳優で知られる
ジョン・タトゥーロ
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…
1941年、ニューヨーク
新進気鋭の社会派劇作家バートン・フィンクは
自作の芝居が好評を博したことにより
ハリウッドの映画会社から
シナリオ執筆のオファーを受け
ロサンゼルスへと向かう
だが任された仕事は
大衆向けのB級レスリング映画の脚本
しかも宿泊先のホテルは
薄暗くて陰湿なムードが漂っている
慣れない環境下で執筆作業に取りかかるバートンだが
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次第に追いつめられ
やがて次々と奇怪な出来事に見舞われていく
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ニューヨークを拠点にする演劇人バートンが
ロサンゼルスの映画の都ハリウッドに抱く
ある種の憧れ
恐れ
アウェイ感…
映画はよそ者バートンの
抑圧された心理がないまぜになった
いわば心象風景を
特異な映像センスで映し出します
その象徴としての
およそリアルでない不気味なホテル
奇妙なホテルのボーイ(=スティーブ・ブシェーミ)
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長すぎるホテル内の廊下
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よどんだ空気が蔓延するくたびれた部屋
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ふと
壁に飾ってある
浜辺に座る女性の絵が気になり
度々じっと観入る…
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程なくして
タイプライターと向き合うバートン
世界が一点に凝縮されるかのごとき
ミニマムで主観的な間…
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しかし
書き出しが決まらない
一向にはかどらない原稿
じっとりとにじむ汗
絶えず動く扇風機
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室内を飛び回るハエ
暑さで剥がれる壁紙
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シュールな光景
デフォルメされた感情の表出としてのディテールの数々
募る焦燥感が
生理的な不快感と相まって
バートンに襲いかかります
そんな中
隣室にいる陽気な大男、チャーリーと知り合い
執筆の合間をぬって
2人は度々部屋で酒を飲んだりして過ごすようになる
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また著名な作家と知り合い
その秘書オードリーに執筆の助言を乞うも
やがて成り行きから一夜を共にしてしまう
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が
朝目覚めると
なんとオードリーは
隣で血まみれの死体になっていた…
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と
隣人チャーリーは陽気な保険屋さんだと思いきや
刑事の話によれば
その実
殺人鬼ムントとして知られる凶悪な犯罪者であることが判明
やがて炎に包まれたホテルの廊下で
チャーリーならぬムントは
2人の刑事を銃殺する
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とまあ
一体どこまでが現実で
どこからが虚構なのか
にわかには判別不能で
終始、バートンを
何より観る者を
混乱の渦中へと落とし入れます
が、しかし
う〜ん
つくづく
これはそもそもが
バートンによる妄想の産物で
アイデアが思い浮かばず
悶々と過ごす苦痛からつい逃れたいという
潜在的な願望の
いわば顕在化と捉えてよいのではないでしょうか
つまりは
小市民によるレスリング物のシナリオを書こうと考え悩む中で
保険屋の大男チャーリーが唐突に現れ
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そして執筆が進まないバートンが
参考までに
他のレスリング映画のラッシュを観せてもらった際に抱いた困惑
映し出された巨体のレスラーに対する
得体の知れない恐怖心から
チャーリーの別の顔
殺人鬼ムントが生まれる
また
ゴーストライターも担う秘書オードリーは
執筆に行きづまったバートンにとっての
理想の存在
苦し紛れにすがりたい逃避の対象で
しかし内心では
彼女の力を借りまいとする
生真面目なバートンの潜在的な意識が
殺人という形で表面化したのでは、と
よくよく本作は
ハリウッドの慣れない環境下で
本意でないシナリオの執筆を求められ
案の定、筆が進まず
どんどんスランプに陥っていくという
バートンの苦悩に満ちた内面の
これ視覚化で
そうしたバートンの混乱を極めた頭の中が
実は本作の中に出てくる
四角い箱の中身なのではないかと
僕は推測するところです
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中身は最後まで明かされることがなく
映画は悪夢のような体験を経たバートンが
ホテルの部屋に飾ってあった絵と同じ光景に居合わせて
終わりを告げます
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この図はバートンが
ハリウッドに対して漠然と抱いていた
ある種、理想の光景であるも
現実のハリウッドは
そんな美しい場所ではなかった
という
これはコーエン兄弟の実体験に基づく
皮肉の表れと見ていいのではないでしょうか
かもめが海に落ちる象徴的なラストシーンが
そんなコーエン兄弟の本音を暗に示した
まんまオチのように思えます
とまあ
上記は僕の勝手な解釈ですが
ネット上では本作に対して
かなりマニアックな考察をする人もいて
つくづく一見すると
なんとも狐につままれたような
奇妙な違和感にとらわれる本作は
しかし観る人それぞれに自由な解釈が可能で
様々なメタファーや示唆に富んだ枠組みを有した
いやあ
これは優れた寓話に違いありませんね
というわけで
『バートン・フィンク』
コーエン兄弟が放った異色の傑作
あらためて
必見です
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