映画『突撃』
1957年製作のアメリカ映画
『突撃』
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監督・脚本はご存じ
鬼才、スタンリー・キューブリック(1928-1999)
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のちに世界的巨匠となるキューブリック
弱冠29歳の時の作品にして
う〜ん
この完成度の高さには
ただただ驚かされるばかりです
第一次世界大戦における独仏戦の最中
フランス軍による
ドイツ軍の陣地“アリ塚”陥落作戦はあまりに無謀だった…
この作戦の指揮を任されたダックス大佐は
軍上層部に再三抗議するも
ついぞ命令は覆らず
なかば強引に作戦を決行
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予想通りフランス軍は
壊滅的な打撃を受け敗退する
しかし士気が低く果敢に攻め込むこともできなかったダックス率いる連隊に対し
軍上層部は命令に背き退散したとして
見せしめに隊の中から兵士三人が選ばれ
形だけの軍法会議にかけられる
元弁護士の経歴を持つダックスは
上層部に立ち向かうも訴えは退かれ
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やがて兵士三人は銃殺刑に処せられる…
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とまあ
しっかし
あまりに理不尽極まりない仕打ちです
映画は
浅はかな決定を下す上層部と
その尻拭いをさせられる末端の兵士たちを
対比させて描きつつ
その狭間で絶えず苦悩する
カーク・ダグラス演じるダックス大佐の姿を通して
戦争の欺瞞、不条理を炙り出します
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特筆すべきは
塹壕から突撃するまでを捉えた
ワンカットによる長回しの
この異様なまでの迫力
本作は
うねるような塹壕を捉えたシーンを始め
とにかく移動撮影が随所に多用され
独特の臨場感や緊迫感を生み出しています
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そして写真家として培ったキューブリックの
ある種、絶対的なまでの構図に基づいているであろう
苛烈を極めた戦闘場面の
この緻密でリアルな様
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深い陰影をたたえた映像の一瞬一瞬は
まるで報道写真のようです
おそらく
周到に準備された演出のもと
あらかじめ決められた動きに沿って
兵士演じる役者たちは進み、倒れていくのですが
戦場の残酷さに加えて
ある種の様式美に裏打ちされた
無常感のような
ただならぬ空気が
画面からにわかに伝わってきて
独特の戦場シーンを生み出しています
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いやはや
ワンシーンワンショットの
この圧倒的なまでの強度
砲弾が落とされる轟音とダックス大佐の笛の音が
いつまでも鳴り響きます
つくづく
卑劣な密談を交わす
軍上層部のいる大理石が敷き詰められた宮殿内と
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無謀な戦闘を強いられる兵士たちのいる塹壕や戦場との
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この内と外
静と動の
鮮やかなまでのギャップ
さらには
論理と感情
平静さを保ちながら上司の命令を受けるダックスが
終盤で思わず垣間見せる
感情の暴発
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無謀な作戦を粛々と押し進め
軍法会議へと持ち込んでいく論理展開の中にあっての
ダックスの反抗
軍の非人道性に対する人間性の表出で
こうした感情的な様が
物語において大切な起伏をもたらしています
と
本作は何せ
全編モノクロの映像が美しく
奥行きのある
光と影のコントラストが見事で
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室内のシーンは
自然光を多用した絵画のような静謐さをたたえ
また
後のキューブリック作品に特徴的な
シンメトリーの構図もいくつか見られ
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いやあ
長編映画第3作目にして
すでにキューブリックのスタイルを随所に見てとることができます
ちなみに
終盤
綺麗な歌声で
荒んだ兵士たちの心を和らげるドイツ人娘は
この作品の後
キューブリックの妻となるクリスティアーヌ・ハーラン
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これは貴重な映像ですね
というわけで
若きキューブリックの溢れる才能の片鱗が
なんの
すでに完璧な形で創造された
まぎれもない傑作
あらためて
『突撃』は
映画史に名を残す反戦映画の古典です
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