映画『炎628』

はるか前

僕が大学生だった頃に

初めてこの映画を観て

当時、衝撃を受けた

…どころの話ではない

まさに戦慄を覚えた記憶があります

世の中に

戦争を題材にした映画は

数え切れないほどありますが

僕の中では

う〜ん

本作を超える映画は

ちょっと見当たらないような気がしますね

ということで

ご紹介

1985公開のソ連映画

『炎628』

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監督・脚本は旧ソ連の

エレム・クリモフ(1933-2003)

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アクションとかエンタメの要素は皆無の

凄惨極まりない戦争の

赤裸々な実態…

本作は

1943年にベラルーシで起きた虐殺事件を

基にした小説を原作としていて

独ソ戦下における

ドイツ国防軍の占領地だった

白ロシア(現ベラルーシ)の村を舞台に

赤軍パルチザン所属の一人の少年の目を通して

ドイツ軍による村民虐殺の一部始終を映し出した

いわば戦争叙事詩です

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パンチザンに志願した少年フリョーラ

引き止めようと泣き叫ぶ母親や

可愛い双子の子どもたちを尻目に

横柄な軍人たちが少年を連れ去っていく…

森の中

皆で写真に収まる

陽気なパンチザンの兵士たち

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美しい緑豊かな湿地帯で

少女グラーシャと語り合った

つかの間のひととき

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ふと垣間見える

フリョーラの家族をはじめとする

夥しい死体の山

なかば正気を失いながら沼地を進む2人…

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つくづく

脳裏に焼きついて離れない

鮮烈なショットの数々

映画は

リアルでありながら

どこか観念的な

異質な空気感を終始まといながら

少年が見た現実を映し

少年が辿る足取りを追っていきます

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夕闇の空に

閃光のように飛び散り

激しく行き交う

レーザービームのようなミサイルの嵐

腹を撃たれ

うめき声をあげて倒れる牛

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牛の虚ろな瞳

巨大な満月

泣きじゃくるフリョーラ

深い霧に包まれた荒地

死んだ牛と共にいた少年は

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やがて

草原をあてどなく彷徨うが

程なくしてドイツ軍に捉えられる…

捕虜となった人々の

翻弄され

なすすべもない姿

えも言われぬ苦悩が

少年の目に刻印される

そして彼は現実を

目の前で起きている惨状を

直視する…

鳴り響く拡声器

ドイツ賛美の声

右往左往し

騒然とする村人たちは

やがて教会の納屋の中に押し込まれる

抵抗する声

飛び交う悲鳴

村人たちは力づくで入れられ

ギュウギュウ詰めの状態

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その中に

ドイツ兵が

おもむろに

手榴弾や火炎瓶を投げ込み

嬉々とした表情で

火炎放射器を放つ

鳴り響く軍歌

教会の納屋全体が

たちまち炎に包まれる

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あまりの惨劇

阿鼻叫喚の悲鳴

さらに燃え盛る納屋目がけて

一斉に銃を乱射

爆薬を投げつけ

辺り一帯が火の海となる

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いつしか悲鳴は消えていた…

暴虐のかぎりを尽くすドイツ兵たちを

ただ黙って見守るほかないフリョーラ

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燃え尽きる納屋をバックに

少年の頭に銃口を向け

記念写真を撮るドイツ兵士たち

目を見開く少年

映画はただ

狂気の沙汰を映し続けます…

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白樺の木々の森

幽霊のように呆然と立ち尽くすフリョーラ

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目の前に現れる

血まみれになった

放心状態のグラーシャ

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やがて

囚われたドイツの敗残兵を

皆殺しにする人々

終盤にて

唐突にインサートされる

死体のニュース写真

フリョーラが放つ銃声とともに

ヒトラーをはじめとしたナチスのニュース映像が巻き戻され

ヒトラーの幼年期まで遡る

あたかも無に帰すがごとく…

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そうして映画は

森の中へと進軍していくパルチザンを捉え

「大戦中、ベラルーシの628の村々が焼かれた」

という字幕で幕を閉じます

漂う虚無…

本作は

タルコフスキーの映画を彷彿させる

詩的な映像美と

苛烈な戦争がもたらす地獄絵図との

この圧倒的なまでの対比が

観る者を呑み込み…

ふぅ

観終わっても

しばらくは

立ち上がれずにいること必至ですね

つくづく

なんて凄まじい映画でしょうか

というわけで

『炎628』

戦争の狂気を余すことなく描いた

クリモフ渾身の力作

いやあ

あらためて必見です

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