映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

映画評

だいぶ前に観た

アメリカ映画です

ケネス・ロナーガン監督・脚本の

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

↓↓↓

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ケイシー・アフレックがアカデミー主演男優賞を受賞した

話題の人間ドラマです

ポスターのキャッチコピーに

「癒えない傷も、

忘れられない痛みも、

その心ごと、生きていく。」

とありますが

しかしまあ

なんという映画でしょうか

ちょっと言葉が見つかりません

以下、ストーリーをサイトより転載

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アメリカ、ボストン郊外で便利屋として生計を立てるリーは、兄ジョーの訃報を受けて故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る

遺言でジョーの16歳の息子パトリックの後見人を任されたリーだったが、故郷の町に留まることはリーにとって忘れられない過去の悲劇と向き合うことでもあった

本編で

主人公リーの過去と現在の模様が

交互に描かれるのですが

過去の底抜けの陽気さと

現在の沈鬱で荒れすさんだ様の

このあまりの落差

かつて

ここ故郷の地で

リーに一体何があったのか

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本作は

主人公の日常を

あくまで淡々と描いてるだけの静かな展開ながら

途中、本編で明かされる

ある決定的な出来事を目の当たりにすることで

観ている側は

取り返しのつかない過去を持つ主人公の

想像を絶する苦悩を

追体験させられることになります

まさに

パラダイムの転換

衝撃の出来事を知る前と知った後とでは

目の前に映し出される映像の

故郷の風景の

意味が違ってきます

う〜ん

観ていて胸が締め付けられます

しかし映画は

ただ重苦しいだけではありません

本編の序盤

リーの兄が急死し

残された甥のパトリックと

つかの間の共同生活を送ることになるのですが

悲しみに浸りつつも

時折垣間見えるユーモアが

ドラマにより生活感やリアリティをにじませ

むしろリーのやるせなさや

父の死を日常で紛らわそうとする

パトリックの戸惑いぶりが

逆に深いところまでグッと迫ってきて

とてもいい

映画はシリアスな題材ながらも

決して暗いトーンで覆わず

港町マンチェスター・バイ・ザ・シーの

どこまでも穏やかな海

静かな佇まいに溶け込むように

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リーとパトリックを取り巻く日常を

優しい眼差しで見つめていきます

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この地に主人公の心情を重ねつつ

しかし

映画は

容易な癒し、再生を許しません

あらためて本作は

苦悩する主人公リーの

贖罪

いわば

魂の遍歴

を描いているのですが

では

救済に至るのかというと

う〜む

終盤のミシェル・ウィリアムズ演じる元妻とのやりとりは

切ないシーンでした

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人生には

時に

克服できない過去もある

でも

そうした諦念の上に立ってなお

それでも

人生は続き

人は生きる

ということ

う〜ん

全編に漂う慎ましさ

丁寧な演出によって紡がれたショットの数々に

作り手の良心を垣間見

また同時に

確かな知性を感じとることができましたね

そして

立ち直れずにいる主人公に

いつしかどっぷりと感情移入している自分がいたのですが

映画を観ている最中に

自分の中にある

にわかに

みなぎってくるのを覚えました

まあ心が晴れるといいましょうか

ある種の浄化ですね

映画を通して

観ている側が自ずと癒される

そんな役者による演技の力

映画の持つ可能性を

あらためて感じさせられた次第です

いやあ

つくづく

映画もまだまだ捨てたもんじゃないなぁ

というわけで

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

真に力湧き上がる映画

傑作です

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