映画『眺めのいい部屋』
1986年製作のイギリス映画
『眺めのいい部屋』
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E・M・フォスターの小説を
イギリスの名匠、ジェームズ・アイヴォリー(1928-)が映画化
言わずと知れた名作ですね
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20世紀初頭のイギリス
良家の令嬢であるルーシーは
旅先のフィレンツェで
一人のイギリス青年ジョージと知り合い
2人は互いを強く意識するようになる
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ピクニックに行った際に
ジョージから情熱的なキスをされ
動揺しつつも心奪われたルーシーだが
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従姉のシャーロットがその様子を察知し彼女を連れて帰国
数か月後、ルーシーはセシルという高い教養のある男性と婚約
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しかしひょんな偶然で
ジョージが近くに越してきて2人は再会
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再びジョージから熱いキスを受け
思いを告げられたルーシーは
悩んだ末
セシルとの婚約解消を決意する…
そうして秋
ルーシーとジョージはフィレンツェを再訪
2人が初めて知り合ったペンションに泊まる
窓をあけると
美しい風景が広がっていた…
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封建的価値観の根強い20世紀初頭のイギリスを舞台に
ひとりの名家の令嬢が
異国の地で出会った男性との恋を通して
自由と真実の愛に目覚め
内面的な成長を遂げていくプロセスを
時代考証に基づいた衣裳や調度品の数々を揃えた格調高い美術
そして彫刻が点在するフィレンツェの石畳の街並みや
印象派の絵画を彷彿させるイギリスやイタリアの豊かな田園風景など
美しい映像で綴ったドラマです
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まあ物語そのものは
どってことないラブストーリーだったりしますが
なんのなんの
本作は端々のディテールに本物が宿っているような
深い味わいに満ちています
映像に真実味、説得力があります
何より俳優たちの瑞々しい演技も手伝って
全編、生き生きとした躍動感、生命力に溢れています
ふと
さながら旧時代に自由な息吹をもたらした
マネの絵画の世界のようです
あらためて
演じる役者たちが皆いいんですね
主演のジョージにジュリアン・サンズ
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窮屈な世を憂い
熱く大胆な行動をいとわない一途な青年を好演
そして令嬢ルーシーに
当時新人のヘレナ・ボナム=カーター
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フィレンツェという異国の街を歩き
人々と接し
文化、芸術に直に触れることで
次第に体裁に縛られた心を解き放っていく
イギリスに帰ってからも
己の気持ちに忠実に生きようとする
そんな感受性豊かで好奇心旺盛な自立した女性を
等身大でリアルに演じていて
う〜ん
この女優は素晴らしいですね
さらにもう1人
本が手放せない“堅物”の教養人セシルを演じた
ダニエル・デイ=ルイスが
これまた出色です
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この3人を軸に
マギー・スミスやジュディ・デンチなど
イギリスの名優たちがしっかりと脇を固めています
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と
劇中のセリフ
「イタリアには堅物をもロマンチックにさせる何かがある」
さらに本作を象徴するジョージのセリフ
「彼(セシル)にとって君は絵のように眺めて所有する物だ
飾り物なんだ
君が意思を持つことを嫌う
彼は愛してない
僕は愛してる
僕の腕の中にいても君の考えを持ってほしい」
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とまあ
総じて本作は
人生の喜びをうたった映画ですね
オープニングのタイトルロールや
途中、ピクニックでのキスシーンで流れる
プッチーニのオペラのアリアが
本作のテーマを華々しく彩っています
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古き良き伝統を誇るイギリスと
一方で
旧態依然とした価値観に縛られる保守的なイギリスという
いわば両側面を
本作は的確に描写しつつ
その中で生きる若者たちの戸惑いや
どこまでも自由を求める
ありのままの姿を
落ち着いた基調の映像で
丁寧に映し出していきます
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そしてつくづく
20世紀初頭のイギリスやイタリアの世相風俗の
情緒豊かなノスタルジーが
フィルムの中に
完璧に封じ込まれた
この予定調和の世界
というわけで
いやあ
全編に息づく本物の魅力に
ため息の出るような美しさを覚える
アイヴォリー監督の名編
『眺めのいい部屋』
今更ながら
傑作です
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