小津映画の神髄
黒澤明、溝口健二とともに
かつての日本映画黄金期を支えた
世界に誇る巨匠のひとり
ご存じ
小津安二郎(1903-1963)
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先月立て続けに
小津作品がBSで放映してまして
思わず何本か観ちゃいましたね
昨年9月に亡くなった伝説の女優
原節子(1920-2015)の
追悼の意も込めての放映だったようです
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監督の小津
そして出演の原節子にとっても代表作となった
『東京物語』(1953)
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いやあ
何度観てもいいですね
小津の映画は
基本的には家族の話ばかりで
他の小津作品も
シチュエーションを変奏するのみで
正直どれもみんな一緒
さらには
“小津組”と呼ばれ
固定されたスタッフやキャストを好んだゆえ
立て続けに何本か観ると
ついこんがらがっちゃうほど
ひたすらに同じ役者が出演してます
う~ん
しかし
どれもこれも最高なんです
『秋日和』(1960)
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『彼岸花』(1958)
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若き岩下志麻が魅力的な小津の遺作
『秋刀魚の味』(1962)
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おっと
個人的に最高傑作はこれかなと思います
『麦秋』(1951)
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「小津調」と称されたその特異な作風と
作品に息づく世界観
とにかく演出がユニークです
撮影手法も独特
カメラは常に低い位置に据えたローポジション
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(余談ですが
小津監督はカラー作品になってから
画面のどこかにアクセントで赤を入れるのを好んだそう)
パンやズームなど
カメラを動かすことは一切せず
三脚を立てたFIX(=固定画面)のみという
シンプル極まりないショットの積み重ね
中でも当時では珍しい
というより
なかば反則技とも言われた
人物を真正面から捉えたショットの多用
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おっと
こちらもよかったですね
二代目中村鴈治郎が
旅芸人一座の座長を茶目っ気たっぷりに演じた
『浮草』(1959)
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役者たちの演技も
往々にして抑制された感情表現
最小限の動きと
必要最低限のセリフ回しで
同じフレーズを何度も繰り返す
同じ場面や場所が映し出され
同じカットを何度も使用する
そうした人物たちの動きやセリフ回しを
独特のトーンによるユーモアを保ちつつ
心地よいリズムで繰り返す
その絶え間ない運動
反復の妙
う~ん
違和感のある構図、セリフ、テンポ
リアルというよりは
むしろ
とても映画的
より存在が際立つ役者たちの立ち居振る舞い
でも
役者たちはどこまでも自然体が求められます
監督お気に入りの名優
笠智衆の佇まい、セリフ回しが
まさにそんな監督の美学を見事に体現
つくづく
本当の自然とは
実は不自然なのかもしれないなぁ…
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つまりは
ミニマリズムなんですよね
感情も動作もセリフの数も撮影手法も使う画も
そぎ落としてそぎ落とす
必要最低限のものだけで表現する
これは
日本の伝統芸能
能にも通じる
ある種の
様式美
引き算の美学であり
まあ
過剰や饒舌は野暮なんですね
そうした節度から喚起される
豊かな想像力
小津映画には冠婚葬祭シーンが多いのですが
礼服はもちろん
喪服姿の慎ましい女性たちに
そこはかとなく漂う色気
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これも傑作でした
『小早川家の秋』(1961)
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黒づくめの
着物姿の
上げた後ろ髪の
うなじのあたりに見る
貞淑…
抑制された姿から生まれる
あらぬ妄想
って
おっと
考えすぎでしょうか…
でも
これぞ映画的表現の妙味ですよね
そういえば
こちらも見ようによっては妖しい映画でしたね
父と娘を描いた名作
『晩春』(1949)
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こう
小津映画のある種の健全さ、潔癖さゆえ
どうにも
アブノーマルなまでに
想像をたくましくさせられる僕がいるんですよね…
ハハハ
と
端正でミニマムな映像
一定のテンポで繰り返される反復のリズムを
一瞬
ずらす
監督が定めた
慎ましいまでの
厳格なルールを
自ら
あえて
破る
一定の抑揚の登場人物たちが
垣間見せる
情感のひだ
戸惑いや寂しさ、物悲しさなどの
かすかな感情の変化…
それによって
観ている側に芽生える
感情の揺らぎ…
野田高梧との共同執筆による
練りに練った脚本と厳選されたセリフ
う~ん
わずかな変化を見せられただけで
観ている側は
ついホロリとさせられちゃうんですよね
いやあ
話が尽きないですね
そろそろこのへんにしときます
小津監督が
世界の映画作家たち
例えば
ヴェンダースやカウリスマキ、侯孝賢などなど
後世に与えた影響は計り知れません
というわけで
あらためて
小津安二郎、必見です
小津映画の神髄を是非ご堪能あれ
小津映画は自分には難しくて分からないことばかりでしたが、解説をしていただき多くの気づきを得られました。また、自分が疑いを持って見ていた部分が、自分だけではなく、錯覚でもなかったのだと分かってよかったです(笑)。
ありがとうございました。
>(株)第二営業部 教授さん
コメントありがとうございます^ ^。
よくよく観れば違和感だらけですが、そこが面白いとこなんですよね^_−☆