インディペンデント映画話

前回ご紹介した映画評の

ロバート・アルトマン監督の話から派生しまして

インディペンデント映画について

少々うんちくを

古く1920年代にアメリカ西海岸で確立した

大手映画会社による寡占的な製作体制

いわば

「スタジオ・システム」は

プロデューサーが

脚本、演出、編集の最終決定権を持ち

製作から配給、上映に至る

あらゆる権利を

当時の大手8社が

独占的に掌握していた体制を指すのですが

1948

アメリカ最高裁判所が

独占禁止法に抵触するとして

映画会社本体と映画館の所有権を

切り離すよう命じる判決を下します

それによって

大手の支配体制によるスタジオ・システムは徐々に解体

また併せて戦後のこの時期

テレビが各家庭に爆発的に普及していったこともあって

映画の観客動員数は年を追うごとに激減

なおさら従来のスタジオ製作が

困難を極めるようになっていきます

ちなみに

このスタジオ・システムのほとんどが

アメリカ西海岸、ロサンゼルスのハリウッド近郊にあったことに由来し

現在でもアメリカのメジャー映画会社の配給作品は

「ハリウッド映画」

と呼ばれています

念のため

前置きが長くなりましたが

そういった経緯の中で

スタジオ外でのロケーション撮影による低予算の映画や

中小規模の独立プロダクションによる作品など

メジャーの資本に拠らず

自分たちで資金をかき集め

自分たちの撮りたいように

自由に映画を撮る

インディペンデント(独立)系への

志向、欲求、ニーズ、機運が

監督の復権をもたらす

作家主義の台頭とともに

50年代後半から徐々に醸成されていくのです

アメリカ・インディペンデント映画の父

ジョン・カサヴェテス(1929-1989)

西海岸ハリウッドの対極に位置する

東海岸のニューヨークを拠点に

俳優業の傍ら

気心の知れた仲間たちと

自主製作で映画を撮り始めたのも

50年代末からでした

↓↓↓

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即興演出を信条に

俳優たちの生々しい姿を

フィルムに刻印し続けたカサヴェテスの映画は

後の世代に数多くの影響を及ぼしました

この頃はまだインディペンデントといえば

むしろニューヨークのアート系

いわば実験映画作家たちによる

アングラ映画がほとんどでした

そのような状況の中

60年代に入り

ベトナム戦争による国内の疲弊化

国民の不安、不満の高まり

政治への不信感

と負の連鎖が拡大

やがて若者を中心に反体制のムードが蔓延

文学、音楽、アートなど様々なジャンルで

そうした時代の声を顕在化させる動きが

活発化していきます

そして映画の分野でも

「アメリカン・ニューシネマ」

と後に呼称される新しい潮流

一連のインディペンデントな作品群が

60年代後半から70年代半ばにかけて

一気に拡散していくことになるのです

かくして

かつてのスタジオ・システムを踏襲して残った

ハリウッドメジャー資本と

それ以外の海外資本や自主独立資本が

ドラマ、ドキュメンタリーのジャンルを問わず

群雄割拠する

現在の映画製作の姿が形作られるのです

その一方で早くも70年代半ば

社会環境の変化とともに

ニューシネマに底流するペシミズムが

急速に時代遅れとなっていきます

そんな矢先に登場したのが

スピルバーグの『ジョーズ』(1975)であり

ルーカスの『スター・ウォーズ』(1977)などで

これら大作群が

ニューシネマに終止符を突きつける形となり

以後、メジャーや独立系を問わず

巨額資本を投下したエンターテインメント大作を

世界中の市場で流通させ

そうして一気に回収する

いわゆるブロックバスター戦略が

メインストリームとしてどっかりと居座り

そうした流れが今現在

ますます主流となっている状況にありますかね

う〜ん

それはそれで

大変憂慮すべき事態かなと思いますが

まあそういうわけで

話が大変長くなりましたが

インディペンデント映画が

表現スタイル、製作手法の両面において

アメリカ映画史を切り開いたという点で

あらためて

僕は評価したいと思います

ちなみに僕のお気に入りは

上述のカサヴェテスの他に

やはりニューヨークを活動拠点にした作家たちで

例えば

ご存じ

生粋のニューヨーカー

ウディ・アレン(1935)

↓↓↓

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あるいは

デ・ニーロと組み

狂気に満ちた問題作を連発していた頃の

マーティン・スコセッシ(1942)

シチリア系イタリア移民の出自

カトリックとしての信条

音楽全般に対する素養が絡み合った

独特の世界観を表出していました

↓↓↓

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他にも

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』など

定住することのない異邦人的な感覚と

詩的な感性で映像を紡いでいく

ジム・ジャームッシュ(1953)

↓↓↓

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などですかね

って

いやあ

なんだかすっかり

僕の趣味全開モードになってしまいまして

ハハハ

というわけで

アメリカのインディペンデント映画にまつわる話でした

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