映画『薔薇の王国』
1986年製作のドイツ映画
『薔薇の王国』
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監督は
実験的で先鋭的な映画を発表し続けた異才
ヴェルナー・シュレーター(1945-2010)
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シュレーターは
古典から前衛まで幅広く網羅した映像表現に対する深い造詣や
オペラへの傾倒などが絡み合った
独自の耽美的な世界観を創出
まさに知る人ぞ知る映画作家です
いやあ
映し出される映像のなんとまあ魅惑的で
そして異様なこと
とにかく独特の美意識に溢れていて
人によって好き嫌いがはっきりと分かれますね
と
本作の主演は
シュレーター作品でおなじみの
マグダレーナ・モンテツマ
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本作は
彼女が癌で余命幾ばくもないことを知ったシュレーターが
彼女の最後の姿をフィルムに残そうと
仲間たちから資金をかき集め
なかば見切り発車で撮り始めた作品で
そうしてモンテツマの遺作になると同時に
はからずも彼の代表作と相なった
伝説の映画です
う〜ん
ドイツ・アンダーグラウンドで名を馳せたシュレーターらしい
映画人としての気概を感じさせる話ですね
…
ポルトガルの田舎で薔薇園を営むアンナと
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息子のアルベルト
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ある日、彼はふいに現れた青年フェルナンドに魅せられ
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納屋で密かに会うようになる
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息子を溺愛する母に度々問い詰められる中
やがてアルベルトはフェルナンドに対し
ある破滅的な行為を及ぼしていく
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鮮烈な薔薇の赤
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古めかしくも神秘的な館
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多用される斜めに傾いた構図
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散りばめられたシンボリックなショットの数々
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近親相姦と同性愛が混在した
およそリアルでない
象徴的で様式化された寓話
オペラの官能的な調べとともに
物語は次第に悲劇的な色を帯びていきます
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しぶきをあげる波
2人を覆う心のざわめき…
アルベルトがとったある儀式
それは2人の愛を永遠に封じ込めるかのごとく
フェルナンドの身体を刃物で切り刻み
そこに薔薇を入れていくという
倒錯的なまでの行為
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薔薇で全身血まみれのフェルナンドを抱えるアルベルト
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やがて炎に包まれる館
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全編これ
死と狂気の淵へと誘うイメージの羅列
まさに耽美の極み
というわけで
『薔薇の王国』
いやあ
シュレーターの強烈な美意識に裏打ちされた稀有な映画
ただただ圧巻です
と
ついでにこちらもすごい
シュレーターによる1972年の異色作
『マリア・マリブランの死』
19世紀に実在したオペラ歌手の生涯をモチーフにしながら
極度に様式化された
独自の幻想的な世界観を構築
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若き日のマグダレーナ・モンテツマ(右)の
どこまでも異質で強烈な個性
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緩慢かつ冗長なまでに
その可動域を広げる
舞台の演者たちの表情、身振り
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う〜ん
これはまさに舞踏ですね
時間の概念が希薄な催眠的なまでの陶酔
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そしてマリブランの死
モンテツマの放つ官能
その特異な存在感に打ちのめされること必至
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いやはや
なんといいましょうか
言葉でうまく言い表すことのできない
ある種の衝撃
あらためて
類い稀な感性を持つ異能の人
シュレーター恐るべし
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