映画『逃亡地帯』

1966年公開のアメリカ映画
アーサー・ペン監督の力作
『逃亡地帯』
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…
石油成金が牛耳るテキサスの田舎町に
刑務所を脱走した囚人が帰ってくる
という情報が駆け巡る
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噂を聞きつけた町の住民たちは
夜ごと乱痴気騒ぎに興じながら
脱獄囚と町に住む妻を自分たちで捕らえようと殺気立ち
やがて集団ヒステリーによる暴動へと発展していく
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群衆心理に煽られて町が騒然とする中
ただひとり冷静な判断と良識ある行動を貫く保安官に
マーロン・ブランド
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金髪の美しき脱獄囚に
ロバート・レッドフォード
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成金の息子と不倫関係にある脱獄囚の妻に
ジェーン・フォンダ
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全編を覆う鬱屈とした閉塞感
黒人差別はもとより
他者を排斥する論理が公然と横行する
60年代アメリカ南部の保守的なムードの中で
映画は
暴徒と化した群衆によって引き起こされる悲劇の末路を
終始高い熱量で描いていきます
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う〜ん
まさに現代の自粛警察などにも相通じるテーマですね
ところで
本作が製作された1960年代中盤は
アメリカ国内において映画を取り巻く状況が
急速に変化していった時期にあたります
国内はベトナム戦争や公民権運動で激しく揺れ動き
既成の価値観に反発するカウンターカルチャーの波が
あらゆるジャンルに及び
映画界においても
従来のシステムに対抗する形で
シナリオに依らない即興演出や
スタジオの外に出てのロケーション撮影などを主な特徴とする
いわゆるアメリカン・ニューシネマが
にわかに勃興していきます
と
ちなみに記念すべきニューシネマの最初の映画が
アーサー・ペンが本作の次に撮った作品
『俺たちに明日はない』(1967)
と言われています
とまあ
つまり『逃亡地帯』は
ペン自らの手で
新時代の扉を切り拓いたニューシネマの
いわば前夜にあたる作品ということになりますね
それはそうと
つくづく60年代のアメリカ映画って
他国も往々にしてそうでしたが
保守本流の中のそこかしこに
反体制の萌芽が見え隠れしていて
保守と革新
旧世代と新世代が
激しく拮抗し
しかし明らかに若者の勢いに押し切られようとする
そんな転換点を表現した映画が
多々見受けられますね
例えば
スティーブ・マックイーン主演の
『シンシナティ・キッド』(1965)しかり
ポール・ニューマン主演の
『暴力脱獄』(1967)しかり
あらためて本作も
時代の空気を鋭敏に捉えたかのようなフラストレーションが
沸々と煮えたぎっていて
生々しい迫力に満ちています
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演出はたぶんに演劇的で
心理描写が多用され
南部の気怠い停滞感が
まるでテネシー・ウイリアムズの世界を彷彿させます
ニューシネマに特徴的なドキュメンタリー的なリアル
…では決してない
あくまで手法としてのリアリズム
この時代の映画に特徴的な
より寓話的なトーンです
さらに
本作は
『ゴッドファーザー』(1972)に主演する前のブランドと
『明日に向って撃て!』(1969)に主演する前のレッドフォードの共演作です
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ともに神話的な存在になる前の2人
よくよく
選ばれし特別な存在
いわばレジェンド
ある種の普遍性を獲得し
もはや何をやっても許される
時代のアイコンと言い換えてもいいでしょう
この時代のスターたちは
今とはちょっと意味合いが違うかもしれませんね
例えば
現代へと連なる60〜70年代に活躍した
ハリウッドを中心としたトップスターを
ザザッと挙げてみると…
ブランド、ニューマン、マックイーン、ブロンソン、コネリー、イーストウッド、レッドフォード…
またヨーロッパどころでは
モンタン、ドロン、ベルモンド、マストロヤンニ…
などなどで
昔は今ほど母数が多くなかったからでしょうか
トップに君臨するスターたちの存在感たるや
女優ももちろんそうですが別格でしたよね
まあこの時代は
まだインターネットもSNSなどもなく
プライベートを公表したりすることも少なかったですしね…
というわけで
つい話があっちこっちに飛んで
何の話かわからなくなってしまいましたが
いろんな観点で語ることができ
映画史的にも貴重な位置を占める
失われし時代の産物といえる佳作
『逃亡地帯』
あらためて必見です
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