映画『イレブン・ミニッツ』
2015年製作
ポーランドとアイルランド合作の映画
『イレブン・ミニッツ』
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監督、脚本はポーランドの鬼才
イエジー・スコリモフスキ(1938-)
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スコリモフスキは
1960年代にポーランド映画の次代を担う有望株として頭角を表すも
1967年に撮った『手を挙げろ』が
スターリンを批判したとのことで
はからずも
上映禁止の憂き目に遭ってしまいます
とかく
その前衛的で挑発的なスタイル
反体制的な姿勢が
共産党政権だったポーランド当局に
睨まれる形となっていたスコリモフスキは
やがて祖国を離れ
西側諸国を流浪
以後、独自の方法で
映画製作の道を模索し続けます
そうした特異な経緯のもとで生み出された
スコリモフスキの作品は
寡作ながら
どれも無国籍でアナーキーなパワーに溢れ
まあ独特の世界観を宿していますね
御年82歳
いまだ現役を貫く伝説の監督です
ということで
本作『イレブン・ミニッツ』は
そんなスコリモフスキが
持ち前の実験精神や遊び心を
いかんなく発揮して創り上げた野心作で
ポーランドの首都ワルシャワを舞台に
17時から17時11分までに起こる出来事を
多数の登場人物や一匹の犬からの複数の視点で構成された
まこと風変わりな群像劇です
何のつながりもない人物たちが
物語の進行とともに接点を持ち始め
やがてバラバラだったそれぞれのドラマが
ある決定的な出来事によって
ひとつに収束していく
その様を映画は
技巧を凝らしたカメラワークと編集リズム
効果的な音響を駆使して
スリリングに映し出しています
わずか11分で突如変貌する日常
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いやあ
何せまったく先が読めませんでしたね
最初は何の脈略も見出せないシーンとシーンが
思いもよらぬタイミングでつながり
複雑に交差し合います
しっかし
スコリモフスキのオヤジは
撮影当時70代後半にして
なんとまあ
瑞々しくも機知に富んだ感性の持ち主でしょうか
さらには
あざとくも周到に練られた演出が光ります
縦横無尽に絡み合う
大都会を生きる訳ありな人物たち
複眼的な視点で
モザイク状に構成されるプロットの妙
登場人物たちそれぞれが生きる
11分という
“一瞬”を切り取ってみせる鮮やかな手腕
そして
運命の糸で手繰り寄せられるように
17時11分
不慮の事故が訪れる
カタストロフィの衝撃
その今際の際を
スローモーションで捉えた
刹那的なまでに壮大なパノラマの図
ふと
映画とは
これすなわち
時間芸術であるということを
あらためて思い出させてくれます
ヒッチコックばりの落下シーンが最高です
つくづく
現代の高度に張り巡らされた
グローバル社会において
もはや個々人は
まるでパズルのピースのように
世界の中に組み込まれた存在で
本作は
個人主義、合理主義に根ざした
西洋的価値観の脆くはかない姿を
う〜ん
見事なまでの鮮烈さで露呈してみせます
複眼的な眼とはすなわち神の視点
では現代における神とは一体誰か?
(謎の黒点がラストで明かされます)
各々の11分の中に紡ぎ出される現代社会の真実
そして世界はつながっているという
この厳然たる事実
というわけで
いやあ
本作はかなり賛否の分かれる映画ですが
僕は面白かったなぁ
何はともあれ
御大、スコリモフスキ監督には
感服ですね
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