映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
2021年製作
英、豪、米、加、新(NZ)合作の
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
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監督・脚本は
『ピアノ・レッスン』で知られるニュージーランド出身の鬼才
ジェーン・カンピオン(1954-)
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本作で女性では3人目となる
米アカデミー賞の監督賞を受賞しています
しっかし
すごい映画でした
1925年アメリカ
雄大な大自然を背景に
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モンタナ州で大牧場を取り仕切る
フィルとジョージの兄弟
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ある日
弟のジョージが未亡人のローズと結婚し
彼女を家に迎え入れる
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そのことをよく思わない兄のフィルは
ローズや彼女の息子ピーターに対して
あからさまな嫌悪感を示し、冷たく当たる
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しかしあることを境に
フィルのピーターに対する態度が一変
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物語は思わぬ展開を見せていく…
牧場にまつわる業務全般を自ら率先して示し
粗野なカウボーイたちを力で統率
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周囲から畏怖の目で見られているフィルは
風呂にも入らない無頼漢で
女々しさを極端に毛嫌いし
終始、頑なでとっつきづらい雰囲気を醸し出している
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西部開拓時代の神話を継承するかのように
カウボーイを男らしさの象徴とし
かつて自分が牧場経営のイロハを習い
世話になった
ブロンコ・ヘンリーなる人物を
事あるごとに引き合いに出しては
今だに彼を心酔し続けている
…が
しかし
そんなフィルには
人には言えない秘密があった…
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1920年代のアメリカの大牧場という
保守的な男性優位社会にあって
決して許されることのない
セクシャリティの多様性
それを覆い隠すべく
過度な態度を示すフィルの
底知れず孤独な内面
それが歪んだ形で表出し
その不穏な空気が周囲へと拡散
特には
弟ジョージと結婚し同じ家に住むことになったローズへの態度に
それは露骨に表れ
度々彼女を脅かしていきます
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フィルがいるだけで
家の中は張り詰めたような緊張感が漂い
ローズはもう完全に
針のむしろ状態
窮屈なあまり
次第に酒浸りの生活を送るようになっていきます…
ふと
このくだりは
ドラマの大切なポイントとなるシーンだったことが
観終わってからわかりましたね
それはそうと
う〜ん
何せ本作は
フィルを演じた
ベネディクト・カンバーバッチが圧巻でしたね
孤高の佇まい
無言の威圧感
漂う負のオーラ
いるだけで空気がよどむ
圧倒的な存在感を放っています
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そして
およそ男らしくないローズの息子ピーターを演じた
コディ・スミット=マクフィーの
異質で不気味なキャラがこれまた出色で
この子、何かしでかしそうだな
という
ある種、ヤバい雰囲気がプンプン漂っていて
いいんですよね
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とまあ映画は
フィルがピーターに示した態度の変化から
その内奥に秘めた
複雑な心理を共有する2人のやり取りを経て
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予想を超えたラストへとなだれ込んでいきます
う〜ん
なんという意表を突いた展開
思わず唸ってしまいましたね
つくづく
ため息の出るような美しい大自然
古めかしくも味わい深い家屋や調度品の数々
カウボーイたちの日常業務のディテール
そこに生きる者たちが抱く自然風土の過酷な様
何より役者たちのパーソナリティが炙り出される
生々しくもリアルな演技が
壮麗な音楽と相まって
観る者の感情を静かに揺さぶります
いやあ
常にラディカルな視点を失わない
カンピオン監督の
まさに本質を射抜く鋭い演出には
あらためて脱帽でしたね
ちなみに気になるタイトルは
旧約聖書の一節に由来
って
ラストでそれまで観ていたパラダイムが一変しましたね
というわけで
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
多くの示唆に富んだ
魅惑的で重厚な人間ドラマの傑作
必見です
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