映画『英国式庭園殺人事件』

1982年製作のイギリス映画
『英国式庭園殺人事件』
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監督・脚本は
鬼才ピーター・グリーナウェイ(1942-)
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本作が彼の長編第1作になります
…
17世紀末、イギリス南部ウィルトシャー
画家ネヴィルはハーバート家の屋敷に招かれ
夫人のヴァージニアから
ある依頼を受ける
主人が出張で不在とする12日間に
屋敷の絵を12点描いてほしい
夫人は高額な報酬と寝食に加えて
ネヴィルの密会の要求にも応じると言う
そうしてネヴィルは契約を交わし
製図用具を携えて
庭園内のあちこちに場所を定め
写実画を丁寧に描いていく
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作業の合間に夫人と快楽に耽り
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やがて娘のタルマン夫人とも関係を結ぶ
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と
描いていく中で
定めた構図の中に
なかったはずのハシゴや
主人の衣類やタオルなどが映り込み
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それらもすべて絵の中に描き足していく
そして12枚の絵が完成した日
ハーバート氏の死体が運河から上がる…
劇中
画家のネヴィルが
枠内に入った風景を
見たまんま
どこまでも忠実に精緻に
キャンバスに描き込んでいくプロセスが
観ていて面白いですね
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なるほど
自分の好みや色眼鏡を排し
先入観なしに世界を見ることが
写真のなかったこの時代の画家に求められる
重要な要素だったんですよね
キャンパスと等比の枠を用いた
この時代のドローイング(=線画)の画法も
興味深かったですね
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その上で
そうした画家の特質を逆手に取り
あえて証拠、痕跡を絵の中に収める犯人の
この確信犯的な試み
って
そもそも本作は
犯人探しを主としたミステリー物とか
そういったものでもなんでもなく
まあ
なんといいましょうか
絵画を題材とした
異質なアート作品のような赴きですね
つくづく
美しい屋敷や庭園で繰り広げられる
奇妙奇天烈な物語
豪華なかつらや衣装に身を包んだ
軽薄な貴族たち
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ロウソクの炎に照らされ
キッチュ(俗悪) で退廃的なムードをまといます
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あらためて本作は
グリーナウェイの美意識に裏打ちされた
目の醒めるような映像を
随所に堪能できます
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庭園の風景と調和する
白と黒を基調にした抑制された色彩のトーン
至る所
こだわり抜いたであろう
人物たちの配置
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横移動のカメラに見る
端正な画面構成
シンメトリーを多用した平面的な構図
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しばしば唐突に被さる
荘重で軽快なマイケル・ナイマンの音楽
って
ブロンズの彫像や草木に扮するなど
庭園のあちこちで
シュールなパフォーマンス(⁈)に興じる
謎の男の存在が
う〜ん
不可解だ
不気味だ…
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とまあ
ネヴィルは
ハーバート殺しの犯人に仕立て上げられ
あえなく殺される
ことの顛末に至って
にわかに浮かび上がる真相…
ふぅ
なんとまあ
毒気に満ち満ちた
魅惑の世界観でしょうか
というわけで
『英国式庭園殺人事件』
グリーナウェイの特異な美的センスが
美しい庭園の中に結実した異色作
今更ながら
是非とも必見です
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おまけ
グリーナウェイの
『プロスペローの本』について
以前書いた記事です→こちら
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