映画『アンドレイ・ルブリョフ』

1967年製作の旧ソ連の映画
『アンドレイ・ルブリョフ』
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監督はご存じ
ロシアが世界に誇る映像詩人
アンドレイ・タルコフスキー(1932-1986)
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彼の長編2作目となる
上映時間182分の力作です
ロシア美術史上
不世出のイコン画家として知られる
アンドレイ・ルブリョフ(1360-1430)
の波欄に充ちた生涯
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タルコフスキーは
盟友アンドレイ・コンチャロフスキーと
共同で脚本を執筆
本作は
プロローグとエピローグを含む10のエピソードで構成され
ルブリョフの生きた激動の中世ロシアの
まさに歴史絵巻的な様相を呈し
特には
時代に翻弄される民衆の苦難の姿を
度々目の当たりにする中で
激しく苦悩するルブリョフが
紆余曲折を経て
芸術家として覚醒していく過程が
美しいモノクロ映像で丹念に描かれていきます
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第1部 動乱そして沈黙
◎プロローグ
熱気球が空を舞い
ロシアの荒れた大地を俯瞰するも
やがて墜落する
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◎旅芸人 1400年
ルブリョフ、ダニール、キリルの3人の画僧が
長年暮らした修道院を出てモスクワを目指す
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道中
雨宿りをした小屋で村人たちが
権力を風刺した歌と踊りに興じていたが
やがて彼らは兵士に連行されてしまう
◎フェオファン 1405年
著名なイコン画家フェオファンの助手に指名されたルブリョフに対し
キリルは嫉妬と怒りに駆られ俗界に下る
◎アンドレイの苦悩 1406年
師フェオファンとルブリョフが
信仰と聖像画について議論する
師の考えに反し
民衆が希望に目覚めるようなイコンを描くべき
と主張するルブリョフ
◎祭日 1408年
全裸で喧騒にふける異教徒たちの儀式の場に遭遇し
困惑するルブリョフ
◎最後の審判 1408年 夏
ルブリョフとダニールは
大公の命で《最後の審判》の壁画を制作するも
ルブリョフは思い悩み
いっこうに筆が進まない
そんな折
ひとりの白痴の女が聖堂に迷い込み
以後、行動を共にする
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第2部 試練そして復活
◎襲来 1408年
タタール兵による突然の襲来
街は炎で焼き尽くされ
大虐殺が繰り広げられる
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女を襲おうとした兵士を
思わず殺してしまったルブリョフは
殺人を犯した罪を償うため絵筆を折り
自ら沈黙の誓いを立てる
◎沈黙 1412年
元の修道院に戻り
無言の行を続けるルブリョフ
◎鐘 1423年
鋳物師の息子ボリスが
大公から鐘づくりを命じられ
ボリスは大勢の職人を指揮して
鐘を完成させる
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公開日に大勢の市民が集まる中
無事に鐘が鳴ると
ボリスは力尽き
ルブリョフに抱かれて泣き崩れる
ルブリョフは沈黙の誓いを破り
「お前は鐘をつくり、私はイコンを描く」
と語りかける
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◎エピローグ
ルブリョフの描いたイコンの数々
《至聖三者》(1411年または1422-1427年)
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(この一連の作品のみカラーで映し出されます)
ふぅ
つくづく
全編を通して伝わってくるのは
中世ロシアの混沌…
国の圧政に苦しみ
タタール人による侵略の被害に遭いながらも
決して屈することなく逞しく生き抜く
民衆の力強い息吹きです
映画は
厳しく生々しい現実と
そこに生きる人々の姿を
リアリズムで凝視します
さらには
中世ロシアの
深遠で野蛮な神話的世界が
美しいモノクロ映像で鮮やかに現出
慎ましく静謐な中にも
人々の不穏な感情が渦巻き
ルブリョフが生きた時代の
波乱と激動の痕跡が
フィルムに克明に刻まれます
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そして
何度も何度も
幻滅と絶望を味わい
苦悩が深まる一方のルブリョフが
それでもなお
民衆の中に希望を見出し
やがて自身に眠っていた信仰心を呼び起こし
芸術家として生きる覚悟と気概を得るに至るプロセスは
う〜ん
観ていて静かな感動を覚えること必至です
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また
師との議論の最中
キリストの磔刑を再現する場面が
唐突に挿入されて
とても印象的なシーンですが
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全編にわたり
ルブリョフの
つまりはタルコフスキーの
深い信仰心
宗教と向き合う真摯な姿勢を
如実に窺い知ることができます
と
本作は
タルコフスキーが若かりし頃の作品ゆえ
往年の詩情性に富んだ前衛的な傾向は
まだそれほど見られず
スペクタクルな題材を取り上げた
骨格のしっかりした物語という点では
彼のフィルモグラフィの中で
ちょっと異質な一本に挙げられます
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が
本作においても
セリフで補いきれない
詩的なショットが
後年のタルコフスキー作品の片鱗が
随所に垣間見れますね
とまあ
よくよく
本作において
深い陰影に富んだモノクロの美しさと
横長のシネマスコープの迫力が
見事に融合した
この
目を見張る映像の強度です
圧巻の一語ですね
というわけで
『アンドレイ・ルブリョフ』
あらためて
タルコフスキーの若き才能が結実した力作
いやあ
これは傑作
今更ながらオススメです
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おまけ
タルコフスキーの作品について
以前書いた記事です
◎『ノスタルジア』→こちら
◎『ストーカー』→こちら
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