映画『家族の肖像』

先日

Amazonプライムで思わぬ再鑑賞

1974年公開

ご存じ

イタリアの巨匠

ルキノ・ヴィスコンティ(1906-1976)監督の晩年の傑作

『家族の肖像』

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いやあ

つい観入っちゃいましたね

本作は室内劇でして

撮影は全て教授の部屋のセット内で行われたのですが

これは前作『ルートヴィヒ』製作中に血栓症で倒れたヴィスコンティ監督が

車椅子での撮影を余儀なくされたことによる

物理的な制約からきています

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ローマの豪邸で

家族の肖像画の収集・研究をしながら

管理人や家政婦とともに静かな余生を送る老教授

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そこへある日

伯爵夫人ビアンカが

家族と娘の婚約者を引き連れて

教授の屋敷の上階を貸してくれるよう頼みに来ます

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あまりのしつこさに

しかたなく了承してしまう教授でしたが

そこに住むことになる夫人の愛人コンラッドによって

穏やかだった教授の生活は一変

思いもよらぬ混乱の渦中へと巻き込まれていきます

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旧世代の老教授と新世代の若者たちとの交流

なんていいものじゃなく

水と油ですね

これは

平穏、孤独、静寂、保守、安定、固執

に対して

刺激、混乱、破壊、革新、変化、異質

もとより

価値観が全く異なる者同士による

不協和音が否応なく奏でられ

しかし映画は

それゆえに

様々な化学反応をもたらします

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って

何はさておいても

役者陣がとにかく素晴らしい

教授にはヴィスコンティの分身ともいえる

アメリカのバート・ランカスター

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慎み深さと威厳を兼ね備えた老教授を

完璧に体現しています

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貫禄のビアンカ伯爵夫人に

イタリアのシルヴァーナ・マンガーノ

強烈な個性とともに

大人の女性の妖しい色香をプンプン発散させます

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中でも出色は

ヴィスコンティのお気に入り

繊細で危険な美青年コンラッドを演じた

オーストリアのヘルムート・バーガー

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誰もが虜になってしまう

そのカリスマ的な魅力で

圧倒的な存在感を放っています

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また本作には

教授の回想シーンという形で

ドミニク・サンダが母役

クラウディア・カルディナーレが妻役で

それぞれノンクレジット出演を果たし

ヴィスコンティへの敬意を表しています

いやあ

最高の布陣ですね

孤独の中に埋没していた教授は

もしかしたら

自身が望んだはずの

今の隠遁生活に

一抹の寂しさを感じていたのでしょうか

この突然の闖入者たちに

生活のペースを

何より

平静な心を

乱されまくるも

少なからぬ刺激を得て

つかの間

生きる意味を見出していきます

つまり彼らの存在は

教授を

ともすれば陥りがちな死の世界

という眠りから覚ませたといえましょうか

特には

謎の美青年コンラッドが

絵画や音楽に対する類稀なる造詣の持ち主であることを知って興味を覚え

この異質な若者と次第に心を通わせていく様が面白いですね

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コンラッドは実は過激な左翼思想に傾倒して

今は昔の仲間に追われている身で

ビアンカの夫は実業家で

ファシズムを支持する右翼と通じていました

そうした思想的対立が

教授が招いた夕食の場で思わず露呈

娘のフィアンセとコンラッドが激しく対立します

つくづく厄介事が舞い込んでくることのストレス

しかし教授はそこに

自身が失って久しかった家族を見出し

いわば疑似体験をするのです

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「家族と思えばいい

どんな結果になっても受け入れられる」

そんな矢先の翌日

失意の末に思い詰めたコンラッドは

教授に手紙を残して

上階で爆死します

コンラッドに対して内心

親子のような感情を抱いていたのでしょう

教授は衝撃から立ち直れないまま

苦悩の果てに

やがて死の床につくのです

自身が最期に求めた家族の姿を

その脳裏に刻んで

というわけで

ヴィスコンティが晩年に到達した

自身の美学の集大成ともいえる力作

いやあ

何度観ても最高です

絵画や調度品に囲まれた濃密な空間で繰り広げられる

その重厚でスリリングなドラマに

う〜ん

いつまでも魅了されずにはいられませんね

これぞ真の傑作です

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