映画『書かれた顔』

1995年製作

日本・スイス合作の映画

『書かれた顔』

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監督は

スイスが生んだ耽美派の巨匠

ダニエル・シュミット(1941-2006)

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長編デビュー作

『今宵かぎりは…』(1972)以来

幽玄で退廃的な映像美の作品を発表し続け

またオペラの演出家としても知られる

このスイスの巨匠が

日本の歌舞伎や舞踏の中に

自身の追い求める美を見出し

己の美意識とシンクロさせ

無二の世界観を構築

撮影は名手レナート・ベルタ

そうして出来上がった本作は

まさに

夢か、うつつか

およそ判別不能な

異色のドキュメンタリーです

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映画は主に

女形の歌舞伎役者

坂東玉三郎(1950-)に肉薄

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「鷺娘」「大蛇」「積恋雪関扉」を演じる玉三郎の

美しい歌舞伎の舞台映像もさることながら

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化粧を施し

女形へと刻々と変貌を遂げていく

玉三郎の生の姿を余すことなく捉え

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また素顔のままで

独自の演技論、芸術論を語る

貴重なインタビュー映像なども収めています

さらには

芸者に扮した彼を2人の男が奪い合う挿話

「黄昏芸者情話(トワイライト・ゲイシャ・ストーリー)」も

幻想的かつ

豊かな情感が映し出されていて出色です

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本作は

玉三郎の他に

女優の杉村春子(1906-1997)

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日本舞踊家の武原はん(1903-1998)

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舞踏家の大野一雄(1906-2010)

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日本最高齢の芸者・蔦清小松朝じ(1894-1996)

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など

1995年の撮影当時

最高齢に達していた

いわばレジェンドたちの

“最後の姿”を

フィルムに刻み込んでいます

ちなみに

大野一雄の舞踏の模様を収めたフィルムは

KAZUO OHNO』

という短編として

独立して作品化されています

こちらの作品について

僕が以前書いた記事は→こちら

とまあ

つくづく

ダニエル・シュミットの

特異な感性

様式美と相まった

美しくも退廃的な世界観

それらが

日本の歌舞伎や舞踏の中に垣間見え

妖しくも神々しい光を放つ

歌舞伎って

僕はあまり

馴染みがないのですが

よくよく

まあ圧巻の舞台ですね

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そして

あらためて

女形という存在の

特殊性

両義性

ある種のジェンダーレス

虚構でありながら

しかしどこまでも

リアルで生々しい風情

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う〜ん

伝統的な女性像を体現する

玉三郎の立ち居振る舞いの美しさに

思わずため息が漏れます

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というわけで

『書かれた顔』

鬼才シュミットが創出した

フィクションとドキュメンタリーの境界が

かぎりなく曖昧な

夢幻的な世界観

いやあ

ただもう

素晴らしいの一語

必見です

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またまた

おまけ

シュミットの『今宵かぎりは…』について

以前、僕が書いた記事は→こちら

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