映画『1900年』

1976年製作
イタリアの巨匠
ベルナルド・ベルトルッチ監督による
一大長編叙事詩
『1900年』
↓↓↓
上映時間は
なんと
5時間16分
いやあ
この映画はあまりの長さゆえ
なかなか劇場公開の機会が少なかったのですが
今から15年くらい前でしょうか
待望のリバイバルがかない
僕は喜び勇んで
劇場へ足を運んだのを覚えています
何しろ
ベルトルッチにデ・ニーロです
デ・ニーロは長い間
僕のひいきでした
↓↓↓
特に70年代の頃は
もうほとんど神がかっていましたね
とりわけこの『1900年』は
当時ビデオ化されておらず
ホント待ちに待った1本でしたね
と
それにしても
長い…
しかし陶酔の5時間16分でした
若きデ・ニーロもさることながら
役者陣がみんないい
精悍な頃のドパルデュー
↓↓↓
麗しきドミニク・サンダ
↓↓↓
ランカスターの威厳
↓↓↓
サザーランドの狂気
↓↓↓
豪華キャスト揃い踏みの面々が
イタリアの大地を躍動します
…
1900年の同じ日に
二人の男の子が誕生する
地主一族に生まれた子と
地主一族が営む農園の小作人頭一家に生まれた子
二人は異なる階層にありながらも
友情で結ばれ共に成長するが
歴史の荒波に呑まれていく中で
お互い次第に対立し確執が生じていく…
↓↓↓
二度の世界大戦という激動の時代背景の中
ファシズムの台頭と隆盛
地主と農民の階級闘争など
波乱に満ちたイタリア現代史が
北イタリアの美しい農村風景を舞台に
二人の主人公を通して
丹念に紡がれていきます
↓↓↓
この圧倒的なスケール
黒シャツをまとうファシストの不気味
搾取する側の地主の無関心
赤旗を掲げて立ち上がる農民たちの熱気…
↓↓↓
動乱の時代の中
イデオロギーの違いがひときわ鮮明に浮き彫りにされ
そこに生きる人たちが否が応にも引き裂かれていく
う~ん
観ていて悲しいシーンも多いですね
そうして
1945年のイタリア解放によって
主人公二人は裁く側と裁かれる側に分かれていく…
いやあ
四季折々の農民たちの生活
ファシズムの暴虐
愛憎入り混じる人々の生々しい描写…
乗りに乗っていたベルトルッチ監督の骨太な演出が光ります
↓↓↓
そして
イタリアの圧倒的な田園風景と
そこに生きるけなげな農民たちをとらえた
ヴィットリオ・ストラーロの深い陰影のある映像
エンニオ・モリコーネの切なく抒情的な旋律
豪華な出演陣たちによる名演技はいわずもがなで
まさに一流揃い
これぞ映画
って感じですね
まあ5時間を超える長編ですから
自宅で酒でもたしなみながら
映画の世界に身を委ね
時間を忘れてじっくりと観てほしい一本です
ところで
話は逸れますが
この映画を劇場で観たときのちょっと切ないエピソードを…
劇場内で
映画サークルの部員らしき大学生3人が
僕の前列に並んで鑑賞していました
後ろから推察するに
なにしろ待ちに待った『1900年』リバイバル上映
嬉しさで高鳴る鼓動をどうにか抑えつつ
どことなく姿勢を正し
あくまで映画に敬意を表して
静かに鑑賞しているふうでした
と
彼らの後ろ
つまり僕の隣の席には
おばちゃん2人が観ていました
このおばちゃんたちには神聖なる映画鑑賞といった風情はみじんもなく
むしろ
まるで寅さんでも観るかのように
上映中ゲラゲラ笑ったりしながら
文字通り、映画を楽しんでいました
明らかに前の学生たちにとっては耳障りな観客だったのでしょう
まあ僕も学生たちの気持ちはわからなくもなかったですが…
そして悲劇は最後に訪れました
映画のラスト
イデオロギーの違いで長い間反目していた
デ・ニーロとドパルデュー演じる老人が再会
少年時代の思い出の場所で
列車のレールに横たわって度胸比べを始めます
すっかり童心に帰ってしまい
自分が老人だということを忘れ線路に横たわるデ・ニーロ
そこへ走ってくる列車
↓↓↓
それを危ないだの
早く逃げろだの
キャッキャ騒ぐおばちゃんたち
内容の描写からみて
おばちゃんたちのそうしたリアクションは“あり”でしたが
かの大学生たちにとっては許せません
神聖なるベルトルッチの待望のリバイバルです
それを通俗なおばちゃんたちに汚されたくない
といったところでしょうか…
前の学生たちの一人の肩が波打ち
妙にソワソワし出してきました
そしておばちゃんのひときわ甲高い笑い声が轟いた直後
もうこれ以上我慢できないとばかり
学生の一人が
にわかに後ろを振り向いて
「ちょっと静かにして下さい
皆の迷惑です…」
…と
彼が後ろを振り向いた
その瞬間…
無情にも
エンドタイトルのクレジットがロールアップ…
あちゃ~
よりによって…
まさに
バッドタイミング
正面に向き直ってから
エンドロールを目の当たりにした彼の
硬直しきった
微動だにしない後頭部が
こころなしか黄昏ていました…
やるせないまま呆然とする彼を
二人が懸命になぐさめていました
う~ん
僕もなぐさめてやりたい
君の行動は決して間違っていない
マナーの悪いおばちゃんのせいだ、と
しかし
彼は
5時間16分の
『1900年』のラストを
見逃しました…
もう
この時は戻らない…
ああ
『1900年』は
それにしても長かった…
音楽がエンニオ・モリコーネなんですか、それだけでワクワクします。しかし5時間以上とは長いですね。何かこの組み合わせだとゴッドファーザーを連想してしまうのはやはり映画素人なんでしょうね(笑)。
いつもありがとうございます、映画館で観客は選べないので自宅という選択もありなのでしょうか。でもその学生さんの気持ち、凄く良く分かります。
>(株)第二営業部さん
ゴッドファーザーは思いつかなかったですね~。言われてみれば確かに製作年の近さ、スタッフやキャスト、イタリア現代史、何より長尺と…いくつか類似点が見出せますね(^O^)/。
さすがです!
いつもコメントありがとうございます(^O^)/。