ファシズムの魅力
1934年のナチス党大会の模様を記録した
『意思の勝利』
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ヒトラー率いるナチスを礼賛した
壮大なまでの映像パノラマ
とにかく流れる映像の
異様な迫力
充満するエネルギー
完璧な統制によってもたらされた
強大なパワーに
ひたすら圧倒されること必至
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監督は
戦後、ナチスの協力者として
長らく非難の的とされ続けた
呪われた監督
ドイツのレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)
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数奇な運命を辿った彼女を捉えた
貴重なドキュメンタリー
『レニ』(1993)は必見です
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と
彼女が『意思の勝利』の他に製作した
一連の作品
例えば
ベルリン・オリンピックのドキュメンタリー『オリンピア』(1938)や
初期の山岳映画
後年のアフリカのヌバ族を撮影した映像
などに対する批評を通して
思わぬ視点を提示した人がいました
アメリカ人のエッセイストで
リベラル派を代表する知識人として知られた
スーザン・ソンタグ(1933-2004)です
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彼女が1974年に書いたエッセイ
『ファシズムの魅力』にこうあります
「…国家社会主義は―広く言えばファシズムは―模様替えをして今日なお生きのびている理想の、複数の理想の代名詞でもあったのである。
芸術としての生という理想、美への信仰、勇気の神格化、共同体感情にひたって疎外感を解消すること、知性の拒否、人類はみな一家(指導者は父である)という考え方などの代名詞でもあったのである。…」
と
ソンタグは
美への崇拝や身体的な優位性
集団的な力の誇示
などに対するある種の憧憬は
誰もが持っている感情であり
しかし
そこにファシズムを見る、と
つまりはそうした
清く正しく美しく
また健康的で超人的な
いわば理想に拠ったスタンス
…そのものが
相対的に
その正反対の存在を
否定することにつながるという
危惧を指摘
そして
これを
誰しもが自然に抱く感情として
抗いがたい
“ファシズムの魅力”
と表現したのです
まあ
美への賛美などの感覚は
もちろん
一概に否定できる話でもなく
しかしだからこそ
ファシズムは今なお
人々の中に生き続けているのだ
と警告したのです
って
逆説的になりますが
レニ・リーフェンシュタールの撮った映画が
それだけ美しいという
これは何よりの証明にもなりますがね
と
ソンタグがレニの映画以外に
同じくファシズム的だとして
挙げている映画が
なんと
ウォルト・ディズニー製作の『ファンタジア』(1940)や
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1967)
だというから驚きです
って
よくよく
そう言われてみると
なんとなくわかるような気が
しなくもないですがね
というわけで
映画に新たな視点を与えることによって
その映画の意外な容貌が露わになる
だけでなく
世界の見方が変わる
う〜ん
これはひとつの確かな例かなと
つくづく感じる次第です
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