映画『セブン』
1995年製作のアメリカ映画
デヴィッド・フィンチャー監督の
言わずと知れたサイコサスペンスの傑作です
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モーガン・フリーマン演じるサマセットは引退を数日後に控えたベテラン刑事
長い警察勤務を通して、腐敗した社会にどっぷり浸かり続けたあまり、諦念が先行し
世の中の酸いも甘いも知り尽くすようになった、いわば知性派
一方のブラッド・ピット演じる新米刑事ミルズは
正義感が強く、考えるより先に感情任せに行動してしまう血気盛んな熱情派
そんな対照的な二人のコンビが
突如起こった猟奇連続殺人事件の捜査を任される
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連日発生する凄惨な事件の犯行現場を調べていくうちに
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サマセットは
犯人がキリスト教の七つの大罪に従って殺人を重ねているということに思い至る
そんな中で二人は
ある特定の容疑者を割り出し突き止めるも逃げられてしまい
さらには犯人にミルズの素性が知られていることも判明する
しかしその後
事態は意外な展開を見せ
やがて驚愕の結末を迎える…
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初めて映画館で観たのが
かれこれ20年以上も前になりますかね
まあ今更なので
あえて結論から言ってしまいますが
(以下、ネタバレ御免)
ケビン・スペイシー演じる猟奇殺人鬼によって
ブラピ演じる理想に燃える若き新米刑事が
人生を破壊され
立ち直れないほどの敗北を喫します
想像を絶するラストの衝撃…
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冒頭から延々と降り続く雨
難航する捜査…
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しかし犯人であるジョン・ドゥが自ら姿を現したとたん
まるで神が降臨したかのように降りしきっていた雨がピタッと止み
晴れ間が見え始めるこの逆説
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七つの大罪を実行することによって
神の裁きを施し腐敗した社会を正すという
ジョン・ドゥの倒錯的なまでの正義が
あろうことかそのまま実証され正当化される
果たして
ジョン・ドゥとは一体何者なのか?
彼は本当に現代における神なのか?
結局、映画は初めから終わりまで
殺人犯ジョン・ドゥが目論んだシナリオ通りに事が進み
そして完遂される…
映画は現代の西洋社会に内在する終末論的な様相
その矛盾と闇
およそ容認し難い現実の姿を
陰影の濃い映像で厳然と映し出します
…
ふと
今から20数年前
映画館にいた僕は上映終了後
程なくしてブラピ目当ての女子高生たちが次々席を立っていくのを尻目に
席から容易に立ち上がれず
しばし放心状態のままでいました
映画のやるせない結末、えも言われぬ絶望感に
ほとほと打ちのめされてしまいました
しかし不思議となぜか
次第に心が軽くなっていくのを覚えました
ん
この開放感は一体なんだろう?
映画が終わった直後は
当時の鬱屈とした自分を重ね合わせてしまい
悶々と満たされない気持ちでいっぱいになっていましたが
なんというか
自分の力ではどうにもならないものがあるんだという
決定的な
ある種、敗北感にも似た気持ちが
逆に僕を軽くしたと言えましょうかね
映画を観た当時
20代中盤頃の僕は
将来のことをクヨクヨと思い悩んでいました
このまま今の仕事を続けるべきか
それとも実家の家業を継ぐべきか…
夢の遠さに嫌気がさし
内心ではあきらめるきっかけを探していた
そんな時分でした…
しかし
そう
この映画は
言い方が悪いですが
甘かった自分を正当化する(=夢を手放す)材料を
無意識に求めていた僕にとって
おあつらえ向きの一本でした
つまりこの映画が内包する絶望感は
僕をさらに深いセンチメンタリズムの闇へと浸らせました
この映画は
“敗北の美学”に酔いしれることを容認させる
危険な免罪符だったのかもしれません
そんなまず持って妙な理屈を組み立て
僕は暗く深い淵をさまよい歩く自分に酔いしれながらも
なぜか内心晴れ晴れとした気持ちで
家路に着いたように思います
このなんとも言いがたい
奇妙なカタルシス…
う〜ん
いま思うと
当時の僕は病んでいたのかな?
わからない…
映画の背景にあるカルト宗教の世界観が
これまた当時のオウム真理教の一連の事件にも通底した
日本の世相をいち早く捉え
よりリアルな空気感となって呼応したのかもしれません
いま観ても
自分も社会もひっくるめたあの当時の暗い記憶が
とたんに呼び覚まされるようで
なんともネガティブで
しかし正直
心地よい心境に陥ったりもするものです
って
おっと
すっかり独りよがりな話が過ぎましたが
われに返って…
ラストのサマセットの独白
「この世は素晴らしい。戦う価値がある」
若気の至りのミルズに
かつての自分の姿を重ね合わせたサマセットは退職を撤回し
不安と絶望に覆われたこの社会で
失われて久しい正義と希望を
ミルズのためにもう一度取り戻そうと決意して
映画は終わりを告げます
というわけで
カイル・クーパーによる伝説のタイトルバックといい
フィンチャーの強烈なビジュアルセンスが全編に貫かれた傑作
あらためて
本当にすごい映画です
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