映画『回路』

そこに
確かに
何かある…
目には見えないが
存在を認知できる
ただならぬ
不穏な気が充満して
空間が歪んでいるかのよう…
かすかな違和感
増幅する不安
得体の知れない恐怖
う〜ん
何しろ薄気味悪くて
嫌な感覚です
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2001年公開の日本映画
『回路』
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監督、脚本は奇才、黒沢清(1955-)
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つくづく
映画は
言葉で言い表せないものを
映像で表現するところに
その醍醐味があるというもの
言い換えれば
いかにして
目に見えないものを映像の中に収めうるか
ある意味、映画は
この命題と向き合ってきた歴史とも言えましょうか
ということで
黒沢清が自作を通して追求してきたテーマ
それは
幽霊を映す
という試みです
ハハハ
って
これは
かつて幽玄で神秘性に富んだ映像が世界を驚嘆させた
溝口健二の『雨月物語』(1953)や
格調高いまでの恐怖演出が圧巻の
小林正樹の『怪談』(1964)
などなどから
現代のジャパニーズ・ホラーへと連綿と続く
まあ
日本のお家芸のようなものですね
…
平凡なOLのミチ(麻生久美子)は
ある日突然
同僚の自殺や勤め先の社長の失踪など
身の回りの人が
次々といなくなる事態に見舞われる…
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同じ頃
大学生の亮介(加藤晴彦)の自宅のパソコンには
ネットにアクセスしていないのに
「幽霊に会いたいですか」
という奇妙なメッセージと共に
突如
不気味な映像が映し出されるようになり
そうして周囲で
不可解な出来事が相次いでいく…
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知らず知らずのうちに
画面フレームの隅に映り込む
暗闇の中のわずかなヒダ
奇妙で不気味なノイズ
「助けて…」
という
一体どこから発されてるんだか皆目わからない
重低音による電話での異質な声
そうした暗く陰湿で不吉なムードを作るのが
う〜ん
この監督は何せ上手いんですよね
(まるでムンクの絵画のような世界観…)
こうした雰囲気描写や恐怖演出の巧みさは
CGの発達と
必ずしも比例するわけじゃないですからね
まさに職人技です
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と
本作が作られた2000年の初め頃は
インターネットが電話回線で繋がっていて
当時はまだスマホもなく
接続にもかなり手間取っていて
今よりも人々のネットリテラシーが
格段に低かった時代です
ゆえにパソコンやネットに対する
オカルト的な見方が依然、根強く
本作はそうしたネットが普及し始めていく時代背景の中で
当時の社会を覆っていた
ある種、漠然とした不安感を
ホラーという形で的確に表現したと言えましょう
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タイトルに“回路”とあるように
こちらとあの世をつなぐのが
このネット回線という設定になっています
ここを通して
ひたひたと浸食するあちらの世界の人
いわゆる幽霊
やがて彼らは公然と顕在化し
次第に周囲が蝕まれていく
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そして
世界が
脅かされていく…
って
ここまでのスケール感になってくると
映像的にはかなり陳腐で
正直、観ていて
どんどんと
悪夢から覚めていくような
我に返るような感覚を抱いて
それはそれで
ちょっとガッカリだったりするのですが
まあでも
監督の意図はよくわかりますかね
というわけで
黒沢清のマニアックなこだわりが
随所に見られる力作
いやあ
僕はやっぱり
怖かったなぁ
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