映画『トラベラー』

ここんところ

レア物が続いていますね

Amazonプライムで視聴

1974年製作のイラン映画

『トラベラー』

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監督は

『友だちのうちはどこ?』で知られる

イランが世界に誇る巨匠

アッバス・キアロスタミ(1940-2016)

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本作は彼の長編デビュー作となります

いやあ

キアロスタミのこんな貴重な映画が観れるなんて

ちょっと感激でした

って

それはそうと

長編第一作にして

すでにこの完成度

ほぼドキュメンタリーの風合いで

それでいて

シンプルながら

軸のしっかりしたドラマです

イランの南部に住む10歳の少年カッサムは大のサッカー好き

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この日も朝からサッカーに興じ

歯医者に行って遅れたと嘘をついて学校に遅刻

先生の目を盗んでサッカー雑誌を読み耽る

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宿題も授業もサボってばかりで

先生や母親にいつも叱られる始末

そんなある日

首都テヘランでサッカーの試合が開催されることを知り

どうしても試合を観に行きたいカッサムは

あの手この手を使って

交通費とチケット代を稼ごうと奮闘する

う〜ん

冒頭のサッカーのシーンから

もう

少年たちのパワフルな様が

目をひきます

ある種、原初の姿です

そして主人公の少年カッサムが

これがまた

逞しいのなんの

ホトホト

タフで狡猾なヤツです

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先生や母親から叱られてもへっちゃらで

家の金を盗んだり

友達を騙したりして

お金を手に入れようとします

キアロスタミは

素人をこぞって自作に起用し

彼らの素の表情をカメラに収めることで

フィクションとドキュメンタリーの境界線が限りなく曖昧な

そんなリアルな映像表現を持ち味としていますが

う〜ん

そのスタイルは

デビュー作からして

もうすでに完成している感ありですね

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カッサムがフィルムの入っていない空っぽのカメラで

友達や通行人に写真を撮っては

金を得るシーンがあるのですが

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次々とカメラの前に立つ子どもたちの表情が

これがなんとも無邪気で屈託がなくて

いいんですよね

写真に映ることが

何か特別なことのようで

嬉々としてポーズをとって

カメラに収まる子どもたち

つくづく

キアロスタミのスタンス

対象となる子どもたちを見る目の温かさ

それが極めて自然な生の姿を捉える

これ、まぎれもない秘訣なんでしょうね

公共物のはずのゴールやボールまでも売り払って金を工面し

深夜バスでテヘランへと向かいチケットを購入したカッサムは

果たして無事

念願の試合を観ることができたのか

って

ああ

なんと皮肉な結末

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漂う物悲しさ

ふと

ここに映し出されている現実

革命が起きる前の70年代イランの

どこか自由で気ままなムード

つくづく

少年カッサムの

どんなことをしてでも金を得ようとする度し難い様が

この時代のイランの空気感と

絶妙に呼応するような

う〜ん

観ていて

思わずそんな気にさせられます

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というわけで

『トラベラー』

若きキアロスタミ監督の卓越した演出が光る

素朴で微笑ましく

どこまでもリアルな現実を映し出した佳作

是非オススメです

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