映画『フィツカラルド』

映画評

1982年のドイツ映画

『フィツカラルド』

何はさておいても

蒸気船の山越えシーンで知られる

伝説の映画です

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監督はニュージャーマン・シネマの鬼才

ヴェルナー・ヘルツォーク(1942)

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世界の秘境や文明の及ばない未開の地を

土俗的、文化人類学的視点で記録したドキュメンタリーから

はたまた偏執狂にかられた人物を描いた

神話性に満ちたドラマに至るまで

その野蛮で特異な作風が

観る者に強烈なインパクトを残します

う~ん

この人はホント普通じゃないですね

舞台は19世紀末の南米ペルー

稀代のテナー歌手カルーソーのオペラに感動したあまり

ジャングルの奥地にオペラハウスを建設するという

途方もない夢を抱いた

実業家のフィツカラルド

彼は劇場の建設資金を調達するため

アマゾン川上流の先にある山の向こう岸に

無尽蔵に生い茂るゴム林を開拓しようと

船でその未開の地を目指す

が途中

急流のため到達が困難となる

そんな状況下でフィツカラルドは

ならばと

深く険しいジャングルの密林を切り開き

蒸気船の山越えを決行する

って

これが

どうして映画の中の話だと片づけるなかれ

ヘルツォークは

CGもデジタル技術も発達していないこの時代に

320トンもの巨大な蒸気船の山越えを

実際に敢行したのです

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つまりこれは映画の話ではあっても

映し出される映像は

もう完全にドキュメンタリーです

う~ん

なんて無謀な試み

しかしなんというスケール

湧き上がる映画的な高揚感

ただただ圧巻です

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途方もない夢にとりつかれた主人公に

クラウス・キンスキー(1926-1991)

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ご存じヘルツォークとの名コンビで

数々の狂気に満ちた演技を披露し

その名を轟かせた怪優です

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(by『コブラ・ヴェルデ』)

ちなみに

この強面のいかにもヤバい奴の愛娘が

なんとあの

ナスターシャ・キンスキーです

う~む

よっぽど母親が美人だったんでしょうね~

それはそうと本作の常軌を逸した主人公の

そもそもの大元は誰かと言いますと

それは監督のヘルツォーク自身に他ならないわけで

このヘルツォークこそ

まさに誇大妄想の塊のような人物

なんでも

キンスキーがアマゾンでの過酷な撮影に耐えられず

思わず逃げ出そうとしたら

ヘルツォークがおもむろにキンスキーに銃を向け

逃げるなら撃って自分も自殺する

と言ったというエピソードも残されているくらいです

いやはや

とにもかくにも

実際に大勢の現地の人たちを

船の山越えという

危険極まりない撮影に協力させているのですからね

その驚愕の映像を見ればわかることですが

船を引っ張り上げるために滑車を作り

どこまでも人力でロープを引き続け

そうして山の頂上まで

あの巨大な船を運び上げるという

この無茶ぶり

この狂気の沙汰

とまあ背景に見え隠れすることですが

このフィツカラルドの稀有壮大な夢は

それはそれで

男のロマンに満ち満ちているかもしれませんが

ある意味

西洋による文明開化

つまりは支配階級による侵略の歴史と

そのまま相重なる構図なわけでして

つまりはヘルツォークの中に内在する

いわばドイツ・ロマン主義の血が

帝国主義の論理と一致することに

どうしても帰結せざるを得ないのかな

という印象を受けますが

果たして監督の真意はどうなんでしょうか

あるいは今度はまったく別の目で

フィツカラルドの姿に

創業一代の姿を重ね合わせて見ることもできますね

例えば

日本に渡ってきた在日一世

僕の祖父の世代

昔こういうハラボジいたよな~的な

さらに言えば

パチンコホールのオーナーのようにも見えなくもない

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周囲の反対を押し切り

とんでもない僻地に1000台のホールを建てようとする

ロマン溢れる()経営者

みたいなイメージ

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ハハハ

それはそうと

恋人である娼館の女将役のクラウディア・カルディナーレが

息ぴったりでいい味出しています

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船の山越えは成功するものの

結局、船は激流に呑み込まれ

オペラハウスの夢は藻屑と化してしまうのですが

それでもあきらめず

最後に一度だけ

船上オペラを上演するという大団円

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う~ん

この圧倒的な独善

無邪気なナルシシズム

でもどこまでも純粋なこの思いの強さには

崇高さすら感じます

いやあ

今どきこういう映画は

まずめったにお目にかかれませんね

映し出される自然の原初の姿と共に

底知れぬ生命力に溢れた奇跡の一本

傑作です


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  1. えりこ

    初コメ★です!
    こういう感じの記事は共感できます!
    勉強になりました。またきます!

  2. チョー!

    >えりこさん
    コメントありがとうございます‼️

  3. さとりカウンセラーゆうりという者です ( ̄∀ ̄)・:*:色々な記事を見て回っていたら、たどり着きました!(o*゜∇゜)o~♪また、このブログ訪問しますね♪ ж>▽<)y

  4. チョー!

    >カウンセラ@ゆうりさん
    コメントありがとうございます^ ^。