映画『冬の旅』
1985年のフランス映画
『冬の旅』
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監督・脚本は
半世紀以上にわたって第一線で活躍した
“ヌーヴェルヴァーグの祖母”
アニエス・ヴァルダ(1928-2019)
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(主演のサンドリーヌとの一枚)
本作は
彼女の代表作の一本に数えられる
キャリア中期の傑作です
う〜ん
観終わってから
とにかくまあ
なんともショックで
戸惑いを覚え
しばらく
いろんなことを考えちゃいましたね
切なく
そして絶望的な映画
つくづく
自由って
こういうことなのかな
…
冬の寒い日
フランスの片田舎の畑の側溝で
凍死体が発見される
遺体は
モナという18歳の若い女だった…
映画は
このひとりの少女の
あてどもない孤独な旅の足跡を
彼女が路上で出会った人たちの
証言を交えながら
辿っていきます
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モナは
寝袋とリュックを背負い
ヒッチハイクをしながら
放浪の旅を続けるのですが
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彼女がどういった経緯で
このような日々を送っているのか
動機も何も明かされません
さらには
彼女が一体何を考えているのか
皆目わかりません
映画は
彼女の過去や内面を
掘り下げたりすることなく
冬の旅を続ける
彼女の苦難の道のりを
ただ淡々と映し出していきます
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道中で
いろんな人たちと出会い
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宿や食料を提供してもらったり
時には仕事をもらったりするのですが
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こう
なんというんでしょうか
彼女の態度は
どこまでも
不遜でわがまま
それと怠惰です
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なので
自ずと
人々から忌避されるようになります
そうして日を追うごとに
汚くみすぼらしくなっていくのですが
彼女の
孤独を身にまとったその姿は
あくまで毅然とし
強靭な意思の力を感じます
そう
この少女モナは
頑ななまでに
自由を希求しているのです
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う〜ん
彼女のその
揺るがない立ち居振る舞いには
ある種
畏怖の念すら覚えるほどです
しかしそれは
社会の規範やルールから
逸脱することにつながります
女性のホームレスに対する
人々の奇異の視線
容赦ない仕打ち
何より
冬の旅がもたらす
過酷な環境
彼女が自由と引き換えに受けた代償は
あまりにも大きかった…
映画は
飢えと寒さにもだえる少女の姿を
感傷や憐憫をまじえず
どこまでも冷徹に捉えることに
終始しています
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そして
そこに自ずと
宗教的な受難の意味合いを
重ね合わせて見てしまいます
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と
少女が辿る行く末
冒頭に映されるのですが
ただもうやるせない
無惨な最期…
ふぅ
そもそも
どうしてこんな辛い目に
遭わなければならないのか
なんとも理不尽で不条理です
よくよく
彼女のありようを
本質的なところで
理解しきれない僕がいますね
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と
全編にわたって
横移動のショットが印象的で
そこにかぶさる
弦楽器による重厚な音色が
乾いた風情を醸し出し…
曇天の空
荒涼とした冬の田園風景と
そこに生きる人々の素朴な暮らし
そうしたリアルな現実の中で
自由と孤独を体現する少女モナが
ひとり放つ異質な存在感
もう限りなく
ドキュメンタリーの風合いです
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それにしましても
本作は
主演のサンドリーヌ・ボネールに
これ尽きますね
もう圧巻の演技です
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というわけで
『冬の旅』
ヴァルダのドキュメンタリストとしての
鋭い眼差し
茫漠たる風景に覆われた実存的な世界観
決して収束することなく
不可解な思いにとらわれ
感情を揺さぶられ
そうして
打ちひしがれるほかない
いやあ
本作は
まぎれもない傑作です
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おまけ
ヴァルダの作品について
僕が以前書いた記事をご紹介
◎『幸福』→こちら
◎『顔たち、ところどころ』→こちら
◎『ラ・ポワント・クールト』→こちら
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