映画『美しき諍い女』

1991年のフランス映画

『美しき諍い女』

↓↓↓

不明.jpg

監督は

ヌーヴェルヴァーグの中心的人物として知られた名匠

ジャック・リヴェット(1928-2016)

↓↓↓

IMG_5206.jpeg

バルザックの短編小説『知られざる傑作』を

舞台を現代に移して脚色

画家とモデルのスリリングな関係を描き

リヴェットの名を

一躍世界に知らしめた傑作です

↓↓↓

IMG_5172.jpeg

南フランスで妻と隠遁生活を送っている

往年の大画家フレンホーフェルは

10年前に取り組んだ作品「美しき諍い女」を

制作途中でやめてしまっていた

当時は妻リズをモデルに着手していたが

完成を待たずに中断してしまい

以来、画家としての活動を休止したままでいた

そんなある日

彼の邸宅に

新進画家ニコラと恋人マリアンヌが訪ねてくる

二人と接するうちに

フレンホーフェルは

長年放棄したままでいた「美しき諍い女」を

マリアンヌをモデルに

もう一度描こうと思い立つ

そうして様々なやりとりを経て

フレンホーフェルとマリアンヌは

創作を開始する

↓↓↓

IMG_5192.jpeg

本作の上映時間

実に238分という長尺

…にもかかわらず

全然長さを感じさせませんね

本作において

フレンホーフェル演じるミシェル・ピコリが

白いキャンバスに

デッサンを施していくのですが

そのリアルなプロセスが

観ていてなんとも面白く

↓↓↓

IMG_5198.jpeg

へぇ

ピコリって絵心があるんだ

と感心していたら

なんと

実際に描いていたのは

本物の画家の

ベルナール・デュフールで(!)

手のあたりのみを映し出すことで

あたかもピコリが描いているように

見せていたんですね

そして映画は

画家が

スケッチブックへのデッサンからはじまり

↓↓↓

IMG_5188.jpeg

やがて大きなキャンバスに描いていく

その一部始終を

編集なしの長回しで撮影

↓↓↓

IMG_5199.jpeg

本作が長尺であるひとつの所以ですが

う〜ん

大胆極まりない筆さばきが

とにかく圧巻で

観る者を自ずと

画面に引きずり込んでいきます

って

本作の日本公開時に

とかく話題になったのが

モデルのマリアンヌを演じた

エマニュエル・ベアールのヌードシーンで

ボカシを入れるか否かの

いわゆる”ヘアー論議”が巻き起こりました

まあ劇中

ベアールが初めてガウンを脱いで

全裸になるシーンは

かなりドキッとしたものですが

↓↓↓

IMG_5219.jpeg

実際のところ

観ていて

全然いやらしくない

…どころか

剥き出しの姿で演じたベアールが

名優ピコリをも凌ぐ存在感で

全編にわたり

神々しいまでの強い光を放っていました

↓↓↓

IMG_5207.jpeg

あらためて

本作最大の見どころ

画家とモデルが

創作を通して

互いを知り理解を深めていく

その長い葛藤のプロセス

↓↓↓

IMG_5187.jpeg

劇中のセリフ

「画家は残酷な真実を求める」

「君を解体する

肉体を脱がせて

骨格をあらわにする

…君の内面を見たいんだ」

「まだ二人とも束縛されてる」

「からだ全体だ

部分など要らない

胸も脚も口も問題じゃない

それ以上を

すべてを

君の中にある血や炎や氷を

つかみ出す

外に引き出して

あの額に残してやる

キャンバスに

…これだ

この見かけの内面にあるものを知りたい

見えないものを…

違うな

私が望むんじゃない

輪郭や描線が望むんだ

描線とは何なんだ

私は追う

描線を追い求める

そしてどこへ?

空へ?

それもいい

空を描線で壊してやる!

もううんざり

まだ序の口だ!

胸も腹も太もももケツも要らん

渦巻き…

銀河や潮の満ち干

ブラックホール…

天地創造前の混沌のことを?

それを君に求めてる」

「君を砕き

解体する

すべてを捨て去った時

残された物が見える」

そうして

フレンホーフェルは

いろんなポーズをとらせて

彼女の核心に迫っていく…

↓↓↓

IMG_5202.jpeg

対する

マリアンヌの

射るような力強い眼差し

↓↓↓

IMG_5176.jpeg

この二人の

火花散らすやりとり

張りつめた空気感

ふとした拍子で芽生える信頼関係

↓↓↓

IMG_5217.jpeg

そうした中で

マリアンヌは

次第に自己を解き放っていく…

↓↓↓

IMG_5216.jpeg

密室の中で互いを曝け出しながら

創作に打ち込む

夫である画家とモデルを

間近で見つめる妻リズ

↓↓↓

IMG_5184.jpeg

かつてのモデルは自分だった

今はもう…

リズの姿が描かれた絵を

わざわざ塗りつぶして

その上から

新たにマリアンヌを描き込む無情

↓↓↓

IMG_5201.jpeg

ジェーン・バーキンが

嫉妬や疎外感に揺れる女性心理を

的確に表現しながら

二人の行く末を見守る妻を

自然体で演じています

↓↓↓

不明_1.jpg

そうして終盤

作品は完成します

…がその絵は映し出されず

果たしてどんな出来栄えなのか

観る者は想像を巡らすのみ

ただ

マリアンヌは出来上がった絵を見て

戸惑いを隠せない

やがてフレンホーフェルは

彼女の本質が炙り出されたであろう

その絵を

封印してしまいます…

↓↓↓

IMG_5214.jpeg

あらためて

ピコリ演じるフレンホーフェル

↓↓↓

IMG_5191.jpeg

バーキン演じるリズ

↓↓↓

IMG_5183.jpeg

ベアール演じるマリアンヌ

↓↓↓

IMG_5180.jpeg

陽光と緑に包まれた古城で

この三者三様の

人間模様が織りなす

濃密で創造的な空間

つくづく

何という独創性でしょうか

即興演出を持ち味とする

リヴェットの真骨頂がここにあります

というわけで

『美しき諍い女』

いやあ

稀に見る人間ドラマの傑作です

↓↓↓

IMG_5212.jpeg

おまけ

主演2人と監督のスナップ

↓↓↓

IMG_5186.jpeg

さらにおまけ

リヴェットの作品について

僕が以前書いた記事です

◎『デュエル』→こちら

◎『セリーヌとジュリーは舟でゆく』→こちら

◎『北の橋』→こちら

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。