映画『美しき諍い女』
1991年のフランス映画
『美しき諍い女』
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監督は
ヌーヴェルヴァーグの中心的人物として知られた名匠
ジャック・リヴェット(1928-2016)
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バルザックの短編小説『知られざる傑作』を
舞台を現代に移して脚色
画家とモデルのスリリングな関係を描き
リヴェットの名を
一躍世界に知らしめた傑作です
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…
南フランスで妻と隠遁生活を送っている
往年の大画家フレンホーフェルは
10年前に取り組んだ作品「美しき諍い女」を
制作途中でやめてしまっていた
当時は妻リズをモデルに着手していたが
完成を待たずに中断してしまい
以来、画家としての活動を休止したままでいた
そんなある日
彼の邸宅に
新進画家ニコラと恋人マリアンヌが訪ねてくる
二人と接するうちに
フレンホーフェルは
長年放棄したままでいた「美しき諍い女」を
マリアンヌをモデルに
もう一度描こうと思い立つ
そうして様々なやりとりを経て
フレンホーフェルとマリアンヌは
創作を開始する
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本作の上映時間は
実に238分という長尺
…にもかかわらず
全然長さを感じさせませんね
本作において
フレンホーフェル演じるミシェル・ピコリが
白いキャンバスに
デッサンを施していくのですが
そのリアルなプロセスが
観ていてなんとも面白く
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へぇ
ピコリって絵心があるんだ
と感心していたら
なんと
実際に描いていたのは
本物の画家の
ベルナール・デュフールで(!)
手のあたりのみを映し出すことで
あたかもピコリが描いているように
見せていたんですね
そして映画は
画家が
スケッチブックへのデッサンからはじまり
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やがて大きなキャンバスに描いていく
その一部始終を
編集なしの長回しで撮影
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本作が長尺であるひとつの所以ですが
う〜ん
大胆極まりない筆さばきが
とにかく圧巻で
観る者を自ずと
画面に引きずり込んでいきます
って
本作の日本公開時に
とかく話題になったのが
モデルのマリアンヌを演じた
エマニュエル・ベアールのヌードシーンで
ボカシを入れるか否かの
いわゆる”ヘアー論議”が巻き起こりました
まあ劇中
ベアールが初めてガウンを脱いで
全裸になるシーンは
かなりドキッとしたものですが
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実際のところ
観ていて
全然いやらしくない
…どころか
剥き出しの姿で演じたベアールが
名優ピコリをも凌ぐ存在感で
全編にわたり
神々しいまでの強い光を放っていました
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あらためて
本作最大の見どころ
画家とモデルが
創作を通して
互いを知り理解を深めていく
その長い葛藤のプロセス
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劇中のセリフ
「画家は残酷な真実を求める」
「君を解体する
肉体を脱がせて
骨格をあらわにする
…君の内面を見たいんだ」
「まだ二人とも束縛されてる」
「からだ全体だ
部分など要らない
胸も脚も口も問題じゃない
それ以上を
すべてを
君の中にある血や炎や氷を
つかみ出す
外に引き出して
あの額に残してやる
キャンバスに
…これだ
この見かけの内面にあるものを知りたい
見えないものを…
違うな
私が望むんじゃない
輪郭や描線が望むんだ
描線とは何なんだ
私は追う
描線を追い求める
そしてどこへ?
空へ?
それもいい
空を描線で壊してやる!
もううんざり
まだ序の口だ!
胸も腹も太もももケツも要らん
渦巻き…
銀河や潮の満ち干
ブラックホール…
天地創造前の混沌のことを?
それを君に求めてる」
「君を砕き
解体する
すべてを捨て去った時
残された物が見える」
そうして
フレンホーフェルは
いろんなポーズをとらせて
彼女の核心に迫っていく…
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対する
マリアンヌの
射るような力強い眼差し
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この二人の
火花散らすやりとり
張りつめた空気感
ふとした拍子で芽生える信頼関係
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そうした中で
マリアンヌは
次第に自己を解き放っていく…
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と
密室の中で互いを曝け出しながら
創作に打ち込む
夫である画家とモデルを
間近で見つめる妻リズ
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かつてのモデルは自分だった
が
今はもう…
リズの姿が描かれた絵を
わざわざ塗りつぶして
その上から
新たにマリアンヌを描き込む無情
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ジェーン・バーキンが
嫉妬や疎外感に揺れる女性心理を
的確に表現しながら
二人の行く末を見守る妻を
自然体で演じています
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そうして終盤
作品は完成します
…がその絵は映し出されず
果たしてどんな出来栄えなのか
観る者は想像を巡らすのみ
ただ
マリアンヌは出来上がった絵を見て
戸惑いを隠せない
やがてフレンホーフェルは
彼女の本質が炙り出されたであろう
その絵を
封印してしまいます…
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あらためて
ピコリ演じるフレンホーフェル
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バーキン演じるリズ
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ベアール演じるマリアンヌ
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陽光と緑に包まれた古城で
この三者三様の
人間模様が織りなす
濃密で創造的な空間
つくづく
何という独創性でしょうか
即興演出を持ち味とする
リヴェットの真骨頂がここにあります
というわけで
『美しき諍い女』
いやあ
稀に見る人間ドラマの傑作です
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おまけ
主演2人と監督のスナップ
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さらにおまけ
リヴェットの作品について
僕が以前書いた記事です
◎『デュエル』→こちら
◎『セリーヌとジュリーは舟でゆく』→こちら
◎『北の橋』→こちら
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