映画『ダムネーション/天罰』

小説でも音楽でも映画でも

どんな作品においても

その作品の主題=テーマと

それを表現たらしめる

技巧=テクニックというものが

往々にして存在し

求められると思いますが

つくづく

僕は主題より

技巧の方が大事だなぁ

と常々感じる今日この頃です

もちろん両方兼ね備えて

しかるべきですがね

ふと

技巧に走る

というと

どこか主客転倒のような

イメージがあり

確かにそうかもしれませんが

圧倒的な技術、スキルを前にすると

それはもう感動してしまうもの

それほど技巧を極めることは

どの分野においても

実際のところ

難しいのではないでしょうか

反面

主題の方は

どうかというと

実際は解釈次第で

ある意味、どうにでもなる

黒を白に変えることも

おそらく

そう難しいことではない⁈

もちろん哲学的命題を

コロコロと変えることはならず

明確な主題をベースにして

作品と向き合わないと

一体何を表現しようとしているのか

その意図するところが

曖昧になり

漫然としてしまい

むしろ技巧だけが一人歩きしてしまい

よくわからなくなる

という懸念が

付きまとうのは承知の上で

なお

まあ度合いの問題ですが

ある程度は

それでも技巧が先行した方が

作品は面白い

観るに足るような気がします

技術を軽視して

コンセプトを重視するのは

はっきりいって

玄人の仕事ではありませんね

きちんとした技術が備わってこその

主題ではないかなと

個人的に痛感する次第です

って

実際は

僕が創作上大事だと思うのは

主題と技巧と

そしてスタイルなんですがね

おっと

それはまた別の機会に

ということで

前置きが長くなりましたが

今回は

技巧に依った映画をご紹介

世にあまたありますが

たとえばこの人

ご存じ

ハンガリーが世界に誇る鬼才

タル・ベーラの初期傑作

1987年製作の

『ダムネーション/天罰』

↓↓↓

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荒廃した鉱山の街を舞台に

人々が堕ちていく様を

神の視点のごとき冷徹さで

ひたすらに凝視した人間ドラマです

本作は

モノクロによる悪魔的長回しなど

ベーラ独自の表現スタイルを確立させた

記念碑的作品として知られていますが

話の流れは遅々としていて

劇中の人物たちの関係も

ちょっと複雑に絡み合っていて

まあ

正直

観ていて

ようわからん

しかし

いやいや

なんのなんの

何しろすごいんです

とにかく

美しく魅惑的で

その技巧を極めた驚異の映像に

圧倒されること必至です

降りしきる雨

アコーディオンの音色

夜の酒場に漂う陰鬱な風情

物語の核とは関係のないディテールに

目を凝らし耳を澄ますうちに

次第に五感が呼び覚まされ

そうしてやがて

人間の本性が炙り出されてくる…

↓↓↓

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悠然としたカメラワークがもたらす

静謐で

それでいて饒舌な映像表現

↓↓↓

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おそらくは

一人一人が

観ている間中

絶えず

いろんな想像力を巡らせ

むしろ

監督の意図していない

自由で主観的な解釈を

可能たらしめる

これは

ひとえに

タル・ベーラの卓越した技巧のなせる業で

観る者は自ずと

ある種、陶酔の境地に達し

監督の主題を離れ

映画を自由に生きることになるのです

いやあ

圧巻です

というわけで

『ダムネーション/天罰』

タル・ベーラの

伝説の始まりを告げる傑作です

こちらは

以前、僕が本ブログで

ベーラの3作品について書いた記事です

◎『ヴェルクマイスター・ハーモニー』

ブログ記事はこちら

◎『サタンタンゴ』

ブログ記事はこちら

◎『ニーチェの馬』

ブログ記事はこちら

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