ジャコメッティ!
ただいま紅葉がきれいな季節
秋といえば
芸術の秋ですね
ふと
今回は
スイス出身の彫刻家、画家の
アルベルト・ジャコメッティ(1901~1966)について
↓↓↓
いやあ
大好きです
ジャコメッティといえば
有名なのが
この針金のように長細い彫像や
《大きな女性立像 II》 (1960)
↓↓↓
怖いくらいの
ゴツゴツしたブロンズ像などですが
《ディエゴの胸像》(1954)
↓↓↓
写実からスタートし
シュルレアリスムなどを経て到達した
この奇妙な造形の真意とは
一体?
ジャコメッティが
終生とりつかれたテーマ
それは
“見たまんまをとらえる”
ということ
えっ
つまり
自分の肉眼で見える様そのものを
彫刻や絵画で表現しようと試みたのです
う~ん
いまいちピンときませんね
見たまんまって言われても…
だってそんなに人間って
細長くないじゃん
というのが実際のところ
では何なのか?
ハイ
ある一定の距離を保って
できればそれも遠い位置から
人物をじーっと見てみてください
…
なんとなく
わかるような気が…
まあ視覚的に焦点が合わさったところで
細長く見えるような気もする
といいますか
見える時もある(!)
ジャコメッティは
自分の気分や印象、解釈などを取り除いて
対象となる人間や事物を
単なる物体として
ありのままにとらえ
自分の眼で見たそのままを
ブロンズやキャンパスに
刻印しようとしました
それは写実とは正反対のアプローチ
なぜなら人間は機械ではないからです
ジャコメッティは
その時々の自分の
精神的、肉体的なコンディションによって
見え方がコロコロ変わる
そんな矛盾した状況と格闘しながら
対象となる人物や事物の真の姿を
とらえようと試みたのです
なので作品は永遠に完成しません…
でも現存しているジャコメッティの作品は
結果的にどれも似たようなものが多く
上の作品のような
虚飾を極限まではぎ取った
人物像などが出来上がるのです
ここでジャコメッティの語録を引用
「僕は作品の中に感情を表現することは全くできない。
僕はただ頭を構築しようとしている。
ただそれだけのことだ…。」
「僕は外面に苦労するだけでたくさんだ。
内面まで関われないよ。」
う~ん
ジャコメッティは物体としての人物を
ただ己の見えるままに
表現しようとしただけなのですが
出来上がった作品の
にわかに立ち上がってくる
感情のほとばしり…
尋常でない張りつめた緊張感
(キュートなものも多いですが…)
またジャコメッティは
実は自分の身の回りの親しい人しか
モデルにしませんでした
日頃からお互いをより深く理解し
愛情を持って接し合ってきた仲だからこそ
どこまでも物体として
とらえようとすることが
できたのではないでしょうか
そうして出来上がった作品は
人間の本質的な存在感のようなものに
あふれています
《林間の空地、広場、9人の人物》(1950)
↓↓↓
僕も今までジャコメッティの作品は
幾度となく観てきましたが
ついボーっと立ち止まってしまいます
いろいろな考えが頭をよぎりますし
ただその存在感に
圧倒されたり見とれたりもします
何年か前に
神奈川の葉山で
『ジャコメッティ展』が開催された時は
それはもう感激でしたね
百何十点もの作品が
一堂に集められたものですから
実際のところ
それはもうヘトヘトになりましたね
そう
感動は常に疲労と共にあるのです
ところで
ジャコメッティを語る上で
忘れてはならないのが
日本人の哲学者
矢内原伊作(1918~1989)が
自らがモデルとなって
ジャコメッティと過ごした日々を記した本です
↓↓↓
この本を読んだときは
衝撃を覚えましたね
これほどまでに芸術家の本質を捉えた本を
僕は知りません
本書はジャコメッティの創作過程を
淡々と記したものではありますが
その壮絶ともいえる
内的葛藤の様子を
本書は余すところなく捉えています
上述したように
ジャコメッティは
日々見えるままを捉えようと
もがいているわけでして
何日間もかけて創り上げた彫像を
あっけなく壊してしまうことも常で
そうした行為を通して
徐々に作品をものしていく
それを本書は延々と記述しています
正直読んでいて
気が遠くなりそうな時もあります
例えば
長い記述の一節をご紹介
「不可能だ、ほかの者にとってもまた」
「勇気だ!私は臆病だ」
「君はだんだん小さくなる、と同時にむろんますます大きくなる」
「不可能だ、私は豚のように仕事している、もうたくさんだ!なぜ君はポーズすることを拒否しないのか」
「すごい前進だ」
「我慢できない」
「千倍よくなった。内部が消えた。再開してよかった。ほぼ正しくなった。」
…
う~ん
こんな調子で延々と創作が続けられるのです
しかし読み進めるうちに徐々に
芸術家の本性だけでなく
芸術家とモデルの純粋で妥協のない
真に愛情あふれる関係が
ひしひしと伝わってきて
自然と深い感動が湧き上がってきます
いやあ
この本は傑作です
ジャコメッティの作品同様に
本書は
多くのインスピレーションを与えてくれますね
その矢内原をモデルにした彫像や絵画も
これまた必見です
↓↓↓
《ヤナイハラ Ⅰ》(1960-61)
↓↓↓
いやはや
秋の夜長
すっかり長文になってしまいました
最後に
身近なところでジャコメ発見~
↓↓↓
『Mr.インクレティブル』に出てくる
氷を放つことができる黒人
あれ
絶対ジャコメだろ(!)
観ていてピンときましたね
サミーデイビスJrあたりをデフォルメしたら
あれま~
たちまちジャコメッティの出来上がり
といった感じですね
さあてと
早く寝なければ…
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