映画『イニシェリン島の精霊』

2022年製作

アイルランド・イギリス・アメリカ合作の

『イニシェリン島の精霊』

↓↓↓

o0963053515275086068.jpg

監督・脚本は『スリー・ビルボード』(2017)などで知られる俊英

マーティン・マクドナー(1970-)

↓↓↓

o0881049515275086074.jpg

1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島

住民全員が顔見知りの

この小さな島で暮らすパードリックは

この日もまたいつものように一緒にパブで飲もうと

長年の友人コルムを誘うが

突然、彼から何の前触れもなく絶縁を言い渡されてしまう

全く身に覚えのないパードリックが

日をあらためて理由を尋ねると

↓↓↓

o0945055515275086077.jpg

「お前が嫌いになっただけ」

「お前とのつまらない会話で大事な時間を無駄にしたくない」

「残りの人生を作曲と思索に没頭したい」

↓↓↓

o0982060115275086083.jpg

と、あからさまな拒絶の返答をもらってしまう

何かの冗談だろうと

その後もしつこく問いただすパードリックに対し

コルムは

「これ以上、俺に関わろうとするなら

俺は自分の指を一本ずつ切ってお前にくれてやる」

とまで言い放つのだった

↓↓↓

o0887039615275086088.jpg

2人の友情の断絶という

いささかスケールの小さい話が

圧倒的に雄大な大自然のもとで

淡々と進行していくこのギャップ

ある種

シュールで意味深な展開

↓↓↓

o0903058815275086095.jpg

と全編に漂う

島全体を覆う不穏な空気

どうにも拭えない閉塞感

本作のタイトルから

自ずと想起させられるところでは

この孤島に精霊が宿っている

島内をうろちょろと浮遊している

それが感情の火種という形となって

いや

形はないのですが

でもその目に見えないものが

人々の周囲にいつまでもまとわりついて離れず

何かおかしな方向へと人々が陥っていく

そんなイメージでしょうか

知らず知らず

諍いの種が人から人へと

この場合は2人の男たちの間を

ぐるぐると回り回っていく

最悪の結末を迎えるその時まで

↓↓↓

o0895040815275086098.jpg

まさに負の連鎖

しかしよくよく登場人物のこの2

そう悪い人間には見えません

悪意を感じるわけでもなければ

憎悪に満ちているわけでもありません

でもどうにも相容れない

価値観、思想の

ある種、決定的な違いといいますか

ふと

まるでこの構図は

劇中でも語られていますが

対岸で起きているアイルランドの内戦を

比喩しているのかもしれませんね

しっかし

ちょっと

なんといいますか

どこまでがシャレなのか

わかりかねるところがあって

あまりに現実離れしたシュールな展開に

これは笑うとこなのか

それとも大真面目なのか

一体どっちなの

という唐突さが随所にあって

どうにも観ていて戸惑いますね

それにしても指をねぇ

まあシリアスを突き詰めると

コメディに転化する

これ高度な話法なのでしょうね、きっと

うん

そうに違いない

↓↓↓

o1000056215275086101.jpg

出演者たちは皆アイルランド出身の役者さんで

自身、アイルランド人を両親に持つ監督の

強いこだわりが感じられますね

主演の2人はじめ

登場人物たちが皆いい味出しています

親友からの思わぬ仕打ちに戸惑いを隠さず

やがて過激な報復にひた走る善人の男に

コリン・ファレル

↓↓↓

o0879040815275086106.jpg

そして極端な理屈と行動で

親友を突き放す頑なな男に

ブレンダン・グリーソン

↓↓↓

o0946063915275086115.jpg

この2人の立ち居振る舞いが絶妙で

コメディとシリアスを行ったり来たりしながら

うまくバランスを保っています

そこにケリー・コンドン演じる読書好きの知的な妹や

↓↓↓

o0910057915275086121.jpg

バリー・コーガン演じる純真無垢な警官の息子が加わり

↓↓↓

o0833038915275086129.jpg

物語に更なる深みを持たせています

つくづく

この奇妙な寓話の行く末を

憂うこと以外、他にないのでしょうか

映画は観ている僕らに静かに問いかけます

しっかしまあ

マクドナー監督の知性とユーモアに脱帽ですね

というわけで

『イニシェリン島の精霊』

なんとも不条理で

しかし確かな説得力を観る者にもたらす

深淵な人間ドラマの傑作です

おまけ

こちらは前作『スリー・ビルボード』について

以前書いたブログ記事ですこちら

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。